餃子バット
ご覧のように、”バット”です。ステンレス製です。
こちらが、そのふたです。このふたに対して、”バット”本体のことを、”み”とも呼んだりします。
一般家庭では、”バット”よりも、プラスチック製の”タッパー”を使うことが多いかもしれませんが、我々のような飲食店では、”バット”を多用します。
というのも、ステンレスの方が、プラスチックに比べ冷えるので、中の食材や調理したものの”もち”がいいのと、ふたとみを別々に購入できるからです。
”タッパー”とお話ししましたが、正確には”タッパーウェア”のことです。 ちなみに、”タッパーウェア社”という会社が製造していて、”タッパー”、”タッパーウェア”は、同社が商標登録しています。
ところで、このバットよく見ると、こんな風に足が付いています。
何のために足が付いているのでしょうか?
切りつけた刺身です。出しっぱなしにするわけにはいかないので、盛り付けるまで、冷蔵庫にしまっておかなければなりません。
しまう時はこんな風に、足が付いているので、そのまま重ねられるのです。自分も初めて、この状態を見た時、「さすが、プロが使う道具は違う」と驚いたものでした。
さらに、驚いたというか、変わっているのが、この”バット”の名前です。何という名前でしょうか?
”足つきバット”・・・。違います。
正解はこちらの写真を、ご覧下さい。
”餃子(ギョウザ)バット”という名前です。使い方同様、この名前にも最初、自分も驚いたものでした。
名前の通り、焼く前の餃子を並べて重ねてしまうのが、本来の使い道です。ただ、日本料理では、先程のように使ったり、用途は様々です。
我々プロにとっては、ごく普通に使っているものでも、一般の方には不思議に映るようです。よかったら、ご家庭でも使ってみます?
志村
鰆の卸し方
昨日に引き続いて、”鰆(さわら)”のお話しです。
魚市場の写真では、発砲スチロールに入っていました。これが、昨日仕入れた”鰆”です。
見ていると、神棚に奉りたくなる程、素晴らしい”鰆”です。とは言っても、そんなわけにはいかないので、卸さなくてはなりません。
”鰆”は魚の中でも、一二を争うほど見割れしやすい魚なので、卸す時はいつも、細心の注意を払っています。
そのため、卸す時は”鰆”を動かさないようにします。「じゃぁ、どうやって、卸すの?」と思われるかもしれません。
片身を卸したところです。そうしたら、残りの片身を卸すためにまな板ごと動かすのです。
間違っても、”鰆”をひっくり返したりしません。日本料理店の中には、見習いの若い子には、”鰆”だけは触らせないところもあると聞いたこともあります。
話はそれますが、鮨屋さんでは、”鯖(さば)”も”鰆”と同じ様の扱いをしているところもありますし、自分がかつて勤めていた鮨屋でもそうでした。
卸し終えた”鰆”です。見割れしないで、卸すことが出来ました。この”鰆”にふさわしい手際です。ちょっと言い過ぎ!?
偉そうなことを言っていますが、時には身割れさせてしまうこともあります。”弘法も筆の誤り”なんて、生意気なことは言えません。
まだまだ、料理人としては未熟の身。特に、包丁捌きは一朝一夕に上達するものではありません。そのため、毎日包丁を握るようにして、いっぱしの料理人に早くなりたいものです。
志村
拾い買い
予定通りの仕入れが終わって、沼津魚市場を出ようとセリ場を歩いていると、こんな魚が目に入ってきました。
”鰆(さわら)”です。”鰆”については、以前お話ししたことがあります。 下の写真手前の魚が、”鰆”です。
セリが終わったにもかかわらず、買い手がついていません。市場では、買い手がつくと、こんな風に、番号と問屋の名前のついた札が付けられます。
右手前に写っているのが、”鰆”です。ご覧のように、”鰆”には札がついていません。
”鰆”が”ふぐ”と同じ位好きな自分は、見向きしないわけがありません。
早速、市場のセリ人(セリ担当の職員)に声を掛けました。
「ねぇ、あの鰆残ってんでしょ?いくら?」
「あぁ、そうだよ。でも高いよ。キロ、○○(円)。」
具体的な値段も記してもいいのですが、ここではあえてお話ししません。”佳肴 季凛”にいらしたら、お話しはできますが・・・。
「もう少し、安くしなよ。残したって、しょうがないじゃん。鮮度がいいうちに、売っちゃいなよ。安くしておけば、良いことあるからさ。」
「・・・。」
「じゃぁ、帰るよ。」
「待ちなよ。△△(円)にすっからよ。」
「はいよ。一本もらってくよ。」
交渉成立です。今日のやり取りのように、売れ残ったものを買うことや、安いものを探して買うことを、料理人の世界では、”拾い買い”と呼んでいます。
自分が欲しいとなれば、いくらでも出して仕入れます。特に、ここ最近のアオリイカはそんな感じで、その値段に自分でも嫌になります。
今朝のように、あえて仕入れなくてもいいものは、値段次第で仕入れたりします。そうすれば、お客さんにもリーズナブルな値段で提供できます。
魚に限らず、美味しいものを出来る限り、リーズナブルな値段で、召し上がってもらうのが、料理人のあるべき姿だと、自分は思っています。
だからこそ、早起きして市場へ行くのです。それこそが、熱血料理人こと、不肖・志村の生命線ですというより、それを楽しんでいるのが、本当のところです。
志村
定額給付金
今日、ポストを開けると、こんな封筒が入っていました。
富士市役所から届いたものです。
色々と物議をかもした”定額給付金”の申請書です。その是非はともかく、とりあえず封を開けてみました。
「・・・定額給付金を希望されない場合には、・・・。」と書かれていますが、当然希望するので、申請書を出します。
ただ、何でも人に言わなければ気が済まない”口から先に生まれた”自分は、つい”佳肴 季凛”の女将にして家内の真由美さんに、話してしまいました。
ちなみに、我が家では合計で64,000円も支給されるのです。
「このお金で、今度夕飯でも食べに行こう!」
「・・・。ダメ!何でそういうことしか、浮かばないの。」
「せめて、どっかランチでも・・・。それに、富士市で食べれば、地域の経済が活性化されるし、麻生さんだって言っているじゃん。」
「駄目です。」今度は、漢字で”だめ”です。
「そんなこと言わないでさ・・・。」
「DAMEです。」いよいよ、ローマ字で”だめ”です。
万事休す。完全に諦めました。
今思うと、業者さんからの請求書の振りをしておくべきでした。世の殿方は、自宅のポストを開けることは、あまりないかもしれませんが、開けることがあっても、自分みたいなことのないようにして下さい。
志村
しょうさいふぐの唐揚げ
今朝、沼津の魚市場のセリ場には、こんなふぐが並んでいました。
”しょうさいふぐ”という名前のふぐです。以前のブログで、”しょうさいふぐ”に似ている”こもんふぐ”のお話しをしましたが、今日のは、正真正銘の”しょうさいふぐ”です。
”佳肴 季凛”に戻ってきてから撮った写真をご覧下さい。
”しょうさいふぐ”は、小型のふぐで、食べられる部分は、”身”と”白子”だけです。
皮などは食べられないので、卸し方も”とらふぐ”の時とは、若干違います。
小型で、皮も食べれないので、こんな風に、頭と皮と内臓を全部一緒にしたまま、身の部分と分けるのです。この卸し方を、”ぐるむき”と呼んでいます。
参考になるかどうか分かりませんが、”とらふぐ”の卸し方と見比べて見てください。
今朝仕入れた”しょうさいふぐ”は、野締めのものなので、刺身でなく、唐揚げでお出ししています。
”とらふぐ”の唐揚げよりは、幾分味が劣りますが、ふぐ独特の味わいがあります。単品ものだけでなく、会席のコースの一品としても召し上がれます。
早起きして、富士市から沼津の魚市場まで仕入れに行くのですから、”しょうさいふぐ”のように、珍しくて美味しい魚を、見つけて、お客様に食べて貰えるのが、自分にとっては、最高の喜びです。
志村
追伸 ”しょうさいふぐ”に関しては、ひと足先に、携帯会員の方にはお知らせしました。時々、”しょうさいふぐ”のような変り種の入荷情報をはじめ、お得な情報を送らせて頂きますので、是非登録してみて下さい。
各ページにあるQRコードから、登録のページに入って、空メールを送ってください。
ころがし
沼津の魚市場は、漁港も隣接しているので、その場で水揚された魚もセリ場に並びます。
左側が、”スルメイカ”で、右側が”ウマヅラハギ”です。
これは、”ホウボウ”です。三月の”旬の素材”でもあります。この箱には、15本くらい入っています。
これらのように、数や目方がまとまると、それだけでセリにかけられますが、同じ種類の魚がそれなりに獲れるわけではありません。
右側が、”ごまさば”です。左側が、”タイ”と”?”。”?”は”エボダイ”のような・・・。分かりません。
その先には、”カワハギ”、”カマス”、”?”。これまた分かりません。
これらのように、数や目方が揃わない魚のことを、沼津の魚市場では”ころがし”と呼んでいます。
”ころがし”は、それこそ小物ばかりなので、買い手もほとんどつかないので、値段も二足三文どころか、子供のお小遣いにも劣ります。
鮮度は良いのですが、使い勝手はてんでダメで、それこそ、賄い用のためのようなものです。自分も何度か仕入れましたが、今お話しした通りでした。
魚市場には、普段使っているような言葉が、特殊な意味というか、市場の中でしか通用しない意味で使われることもしばしばです。
最近では、そんな言葉も聞き慣れましたが、その語源や本当の意味はどこにあるのか、と思うこともよくあります。
そう思うと、魚市場はある意味”ミステリーワールド”なのかもしれません。そんな場所に、心惹かれる自分は、一体・・・?
志村
ちょっぴり贅沢なランチ
どうもお疲れ様です。真由美です。今週も無事終えることが出来ました。
予約営業(日曜日)と仕込み(月曜日)があったので、”佳肴 季凛”の先週の定休日は、お休みを取ることができませんでしたが、明日は、久しぶりにお休みです。ちょっと、ほっとしています。
けれども、志村さんは仕込みです。そばで見ていて、気の毒のような気もしますが、時間に追われることもないので、気楽に仕込みに没頭するでしょう。
ところで、今日のお昼御飯は、志村さんにお願いして、こんなものを作ってもらいました。
作ってもらったと言っても、お金はしっかり払います。というより、最初に請求されるのですが・・・。
”ちらし寿司”です。
上に乗っているのは、本まぐろ(中とろ、赤身)、平目、すずき、こはだ、いか、たこ、白魚の超豪華版です。
でも、この”ちらし寿司”は、普通のものとちょっと違います。何となくお気づきかと思いますが、御飯が違うのです。
”佳肴 季凛”は、マクロビオティックを基本にしているので、御飯と言えば、玄米中心の雑穀御飯です。
ですから、”ちらし寿司”の御飯も、雑穀御飯でつくった酢飯です。
初めて食べた時は、不思議な感じでしたが、今ではそんな感じもしませんし、これはこれで、OKという感じですね。
普段のお昼は、雑穀粥や子供のお弁当の残りものを食べていますが、たまには、こんな贅沢なお昼御飯というか、ランチを食べて、ちょっぴり幸せな気分を感じています。
これも日本料理店ならでは、特権ですかね?
真由美
からとり
この時季になると、殻つきの鳥貝が入荷してきます。この殻つきの鳥貝のことを、市場では”からとり”と呼んでいます。
主な産地は愛知県で、こんな風に海水の中に入ったままで、入荷してきます。
ですから、仕入れる時は、その大きさ等に注意するだけでなく、水が貝殻に入ったまま、量りにかけないように、逆さにして、水をこぼします。中に入ったままですと、目方が増えてしまうから、こうするのです。
殻つきですから、殻から身を外さなければ、なりません。
今度は身を開くのですが、まな板の上で直にのせてしまうと、鳥貝の命と言うべき、黒い色が剥げ落ちています。これを、”はげとり”と呼んでいます。
”はげとり”は、自分が勝手に呼んでいるだけです。(笑)
そのため、アルミホイルやラップの上で開くのです。
その次に、中の”わた”の部分を、塩と酢の入った水の中で洗ってから、塩と酢の入った熱湯で、軽く湯がきます。
時間は大きさにもよりますが、ほんの数秒程度です。
こちらが、鳥貝の刺身になります。
ところで、鳥貝はこんな風に、開いたもの売られています。
同じように愛知県産ですが、加工地は千葉県と書かれています。また、鳥貝は輸入物もあります。それがこちらです。
韓国産です。
両方とも、生のものですが、開いてあるものはどうしても、風味に欠けます。ですから、美味しくありません。
さらに、鳥貝というと、固いというイメージを持っている方が多く、固いだけでなく、味も素っ気もないものと、思われています。
ここには、写真がありませんが、開いたものを冷凍したものが、固い鳥貝の正体で、”ゴムトリ”とか、”ガムトリ”と呼んでいます。これまた、自分が勝手に呼んでいるだけです。
文字通り、ゴムやガムのように固いという意味です。
鳥貝に限らず、どんなものでも、最初に食べた時の印象で、その本当の美味しさを知らないでいてしまうことが、多いものです。
”佳肴 季凛”では、素材の持つ本来の味を堪能できる食材を、自ら選んで仕入れていますので、鳥貝に限らず、本物の美味しさを味わって下さい。
ちなみに、”からとり”は入荷もまちまちなので、ない時はご勘弁を。
志村
トルコ産のまぐろ
昨日、沼津魚市場のまぐろのセリ場に、こんな風に、卸した状態のまぐろが並んでいました。
近くに、寄ってみると、こんな札が貼られいました。
”トルコ 畜養” ”246,8”と書かれています。
トルコ産の畜養の、本まぐろのことで、目方が246,8キロもある大型のものです。
畜養というのは、ある程度の大きさの魚(この場合、まぐろ)を獲って、生簀で餌を与えて育てることです。養殖と似ていますが、どちらも区別されています。
簡単に言えば、養殖とは、稚魚から育てることです。どちらも、厳密に定義されているので、詳しくはこちらを。
以前、自分も”メキシコ産の畜養まぐろ”についてお話ししたことがあります。
今朝、このまぐろをセリ落とした魚屋さんに値段を聞くと、”佳肴 季凛”で普段使っている”生の本まぐろ”より、多少安かっただけでした。
畜養のまぐろは、トロの部分が多いのですが、味はどうしても落ちますし、正確な言い方ではありませんが、養殖臭がします。また、赤身の色も鮮明さに欠けます。
赤身とお話ししましたが、赤身が美味しいからトロが美味しいのです。当然、生の天然物は、その風味も格別です。
ちなみに、今日、”佳肴 季凛”に入荷した本まぐろは、長崎・壱岐産です。やはり、赤身が違います。
まぐろに限らず、良い魚は高いのですが、それに比例して味も良いものです。
自分は値段そっちのけで、つい仕入れてしまいます。お客様が喜ぶ顔が見たいのと、自分自身のモチベーションを高めていたい気持ちからそうなってしまいます。
ただ本音をお話しすると、後者の方が正しいのです。平たく言えば、自己満足のために、仕入れているようなものです。
さらにさらに、”佳肴 季凛”は全てが手作り自家製である前に、自己満足そのものなのです。
志村
日本料理店の串焼(その2)
日本料理店である”佳肴 季凛”にも、串焼のメニューがあることを、お話ししました。こちらを、ご覧下さい。
”鮪の串焼”ですが、それこそ何ヶ月か一度に、レアものの串焼が、お品書きに並ぶことが、あります。
それがこちらの串焼です。
何の串焼でしょうか?
こちらが、串に刺す前のものです。
蛸(たこ)の口と、くちばしの部分です。
そのままですと、ヌメリもあるので、きれいに落とさなくてはなりません。また、生ですと、固いだけです。
これを適当な大きさに包丁して、串に刺して、塩を振って焼いたものが、”蛸の口の串焼”です。
蛸独特の歯ごたえと甘味が、なんとも言えません。
また、”佳肴 季凛”で召し上がったことのあるお客様は、数える程度のはずです。
蛸の大きさにもよりますが、蛸1パイから、2本しか取れません。このレアものの串焼を召し上がることが出来たら、かなりラッキーだと思って下さい。
志村