新子
光物の定番の一つが、
小肌(こはだ)で、沼津の魚市場に入荷してくる小肌の殆どは、
佐賀県有明海産です。小肌は、一年を通じて、入荷してくるのですが、6月の半ばを過ぎた頃になると、小肌の幼魚の新子(しんこ)が、
入荷し、
一緒に、売場に並ぶこともあります。大きさの違いは、
一目瞭然です。小肌は、鮗(このしろ)の若魚で、新子、小肌、なかずみ、鮗と名前が、変わります。しかしながら、出世魚とは呼びません。
というのも、小さければ、小さいほど市場価値があり、出世魚というのは、大きくなるにつれ、値段も上がるからで、小肌には、このことがあてはまりません。特に、出始めの新子のキロ単価は、入荷量も、ほんのわずかということもあり、天然の生の本鮪以上で、それこそ、目が飛び出るほどの値段なのです。
光物である小肌は、『佳肴 季凛』のような日本料理店では、なくてはならない魚ということもあり、ある程度、値段が落ち着いてから、自分は使うようにしています。
ただ、料理の道の始まりは、鮨屋でしたので、新子を見ると、妙な胸騒ぎを覚えてしまうのです。この日は、値段もそこそこでしたので、
この一袋を、仕入れることにしました。ただ、小さくて、数が多い新子の仕込みは、職人泣かせですので、それなりの覚悟の上でした。
仕入れた新子は、500グラム入っており、大きさはまちまちでしたが、
大雑把に仕分けたところ、このような3つの大きさでした。鱗を取ってから、
頭を落としたら、
塩水の中に入れます。この時の塩水の濃さの目安は、海水程度です。終わったら、
氷水で、素早く、
2,3度、
水洗いします。まな板をきれいにしたら、開くのですが、その前に、
バットに細かくした氷を敷き、
別のバットを置き、
大きさごとに分け、開いていきます。言うまでもありませんが、こうするのは、鮮度が落ちるのを防ぐためです。
開き終えると、
全部で、64枚ありました。つまり、64匹開いたことになります。開いた新子は、それぞれの大きさが分かるように、
塩を敷いた盆ざるに乗せたら、量を加減しながら、塩を振ります。塩の溶け具合をみながら、
酢の入ったバットに昆布を浸します。酢は、
新子を仕込むので、穀物酢とりんご酢を同割りにしてあります。昆布が、
しんなりしたら、合わせ酢から、あげておきます。そうこうしていると、新子の塩が溶けてくるので、
水洗いをします。大きさも違うので、一度にこの仕事は出来ませんので、その都度、
様子を見ながら、やらなくてはなりません。全て水洗いをしたら、
今度は、
一度酢〆に使った二番酢で、それぞれを、
酢洗いします。その後、
先程、昆布を浸した合わせ酢に、大きさごとに付けていくのですが、大きいものから漬け、漬け終えたら、酢から上げ、その後、次の大きさのものを漬けていきます。
今回のように、一番小さいものは、酢だけでは、味が強くなってしまうので、
氷を入れ、酢の具合を加減してから、
漬けます。言い忘れましたが、酢〆の理屈は、塩で、余分な水分を取り除き、取り除かれたところに、酢が入り込むというものですので、塩加減が、キーポイントなのです。
全て、酢に漬けたら、余分な水分などを拭き取るために、
キッチンペーパーを、盆ざるに敷き、新子をおいてから、
その上にも、キッチンペーパーを乗せます。しばらくしたら、
穴開きのバットに新子をおき、
余分な水分を取り除くのと、旨味を補うために、先程の昆布を乗せます。これで、ようやく新子の仕込みが終わりました。
昆布で挟んでおくのも、半日程度が目安で、
頃合を見て、昆布を外したら、このまま冷蔵庫にしまっておきます。コース料理をメインとしている当店ですので、
鱧料理コースのお客様には、このような四種盛りで、お出しし、新子以外のものは、生の本鮪(大間)、鱧(和歌山)、湯葉でした。
新子だけの場合は、
大中小のバランスを考えながら、このように、盛り付けてみました。
脇役に近い小肌ですが、新子の出回る一時季は、主役になります。こういうのも、季節を重んじる日本料理の趣の一つかもしれません。
★☆★ 夏期限定 鱧(はも)料理 ☆★☆
只今、夏期限定コースとして、鱧料理をご堪能いただけるコースをご用意して、皆様のお越しをお待ち申し上げております。
『鱧彩々』 (おひとり 6,000円)と銘打ちました。この時季の美食の極みでもある鱧の味を、是非ご賞味下さいませ。
詳細は、【鱧料理】のページをご覧下さい。
三連休のお知らせ
日本全国津々浦々、夏休みを満喫されている方も、いらっしっしゃると思いますが、『佳肴 季凛』も、遅まきながら、
16日(日)、
17日(月)、
18日(火)と三連休させて頂きます。なお、17日以外の月曜日も、通常通り、定休日とさせて頂きますので、宜しくお願い致します。
★★★ 夏季限定ランチコース『涼し夏(すずしげ)』 ★★★
この時季、当店では、夏季限定ランチコース『涼し夏(すずしげ)』(1,500円 全7品)を、御用意しております。
当店オリジナル料理の“サラダ素麺”をメインにした、清涼感溢れるコースとなっており、食後のお飲物付です。
7月の鮪、色々
8月になりました。逃げ出したくなるような暑い日が続き、土曜日には、水だけでなく、
雪も撒いてしまいました。雪とは言っても、富士山やエベレストの万年雪でもなく、冷凍庫の霜ですが・・・。
こんなことをやっても、涼しくなるわけでもなく、まさに、“焼石に水”状態。猛暑を超え、酷暑、さらなる上をいく激暑・・・。
また、避暑を求め、
この際、水槽浴でもしようかと思いましたが、中には、狂暴な鱧がいるので、もちろん断念。
天気予報を見ても、連日、☀マークと、最高気温が30度超えのRUSH。もう絶句・・・。ここまで来たら、時が経ち、涼しくなるのを待つしかありません。
そんなことはさておき、今日のお話しは、月末というか、月初めの恒例の“鮪コレクション”ということで、7月に入荷した生の鮪の数々です。いつものように、東京・築地からの天然ものです。
先ず最初に入荷したのが、
新潟県佐渡産の生の本鮪で、初めて仕入れた産地でした。佐渡は、漁場も良いこともあり、マグロ類に限らず、様々な魚が水揚げされています。
その次が、
ニュージーランド産と、
オーストラリア産の南鮪でした。南鮪は、通称“インド鮪”と呼ばれているので、ニュージーランド(また、オーストラリア)国籍のインド人とか、“外人部隊”のような呼び名を、自分は付けたりしています。
南鮪の時季が、そろそろ終わりとなると、津軽海峡で、本鮪が水揚げされ始め、
“インド人”の後は、青森県大間産の本鮪が、
連続で、入荷しました。
これまでに、何度もお話ししているように、大間は有名な産地ですが、一番ではありません。お客様の反応が一番なのは、紛れもない事実ですので、お出しする側としては、或る意味都合が良いのは、否定出来ません。
また、大間以外の松前、戸井、三厩、竜飛などの津軽海峡で、本鮪が水揚げされるのは、これから、年明けくらいまでです。真夏のど真ん中ですが、暦の上では、今週にも秋となり、季節は少しずつですが、移ろいつつあります。
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3日連続で仕入れた鱧(はも)は、愛知、和歌山、山口産
今日は、沼津の魚市場に行き、
山口産の2本の鱧と、
和歌山産の2本の鱧を、
仕入れて来ました。和歌山産の2本は、活きたもので、『佳肴 季凛』に戻ると、
そのまま、
水槽に入れておきました。
また、昨日は、
今日と同じ和歌山産のものを、1本だけ仕入れ、夕方、夜の御予約用に、〆てから、
卸してから、骨切りをして、落とし用の大きさに包丁しておき、お客様がご来店するまで、冷蔵庫にしまっておきました。
というのも、落としにしてから、時間が経つと、どうしてもパサパサしたような感じになるだけでなく、冷やし過ぎると、皮のゼラチン質が固まってしまい、口に入れても、ガムのような感じになってしまうからです。
ですので、コースの刺身は、鱧だけ、盛り付けずに、
このような状態で、冷蔵庫にしまっておきます。
そして、一昨日は、
愛知から、活〆にした5本の鱧が、魳(かます)と一緒に、宅配便で届き、結局、この3日間で、合計10本の鱧を仕入れましたが、明日は、市場も休みですし、注文もしていないので、鱧の入荷は、全くありません。
これまでにも、何度もお話ししていますが、鱧は、その時の天候により、入荷が左右されるので、場合によっては、鱧料理のコースを仕立てることが出来ないこともあり、御予約、お問い合せの際には、その旨を必ずお伝えしております。
鱧に限らず、天然の食材というものは、それぞれの特徴があるだけでなく、自然条件に大きく左右されることもあり、時によっては、御用意出来ないこともあります。これが、養殖ものや既製品のようなものであれば、そのようなことは、殆どありません。
ただ、自分は、手作りし、本物の美味しさを、味わって頂きたいので、無理なことや出来そうもないことを、お約束することはしません。
商売としては、もしかしたら、良くないこともしれませんが、自らのスタイルを崩してまで、お金をお頂くのは、本望ではありません。自分自身が納得した仕事で、お客様が納得して頂いてこそ、お金を貰えるのですし、逆の立場なら、そうでないと、お金を支払う気にはなれません。
だからと言って、全ての料理が、100%でない時もあるかもしれません。少なくとも、100%に近づけるよう、105とか、120%の仕事をしようという心持ちは、自分も否定するつもりはありません。
自ら、百点満点をつけ、お客様にも、百点満点をつけて頂けるには、まだまだです。今更ですが、道は、険しく、深過ぎます。
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梅肉醤油
鱧料理の代名詞とも言えるのが、
“落とし”で、“湯引き”とも呼ばれています。“落とし”にする鱧は、
必ず、活きたものでなくてはなりません。そうでないと、綺麗に、花が咲いたようにならないだけでなく、味もパサパサして、美味しくありません。
ちなみに、沼津の魚市場で、今朝仕入れてきた鱧は、
和歌山県産のものでした。
“落とし”には、
梅肉醤油を添えて、お出しし、
卸したての生の本山葵をつけて、召し上がって頂きます。他のつけ醤油が、ないわけではありませんが、梅肉醤油が、定番中の定番です。
そんな梅肉醤油の作り方ですが、鍋に、
日本酒、味醂、赤酒を、2:1:1の割合で合わせ、そこに、
昆布、干し椎茸の足を入れ、半日ほどおき、
火にかけます。
沸いてきたら、
鰹節を入れ、火を止めます。
冷めたら、キッチンペーパーで濾します。
別のボウルに、
市販の梅肉を入れ、
日本酒、味醂、赤酒を合わせたものを、交ぜあわせたら、
土佐醤油を、さらに合わせます。土佐醤油とは、このようなものです。
さらに、甘味を補うため、
てんさい糖を合わせ、味を確認したら、別の容器に移し、冷蔵庫にしまっておきます。
既製品の梅肉醤油もありますが、どんなものでも、手作りしないと気が済まないだけでなく、手作りすることこそ、料理人の存在意義があります。そうすることで、料理への意欲、愛情が生まれますし、自分は、愚直に、仕事をこなすのみです。
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デザートに使うリキュール色々
先日、パイナップルのアイスについてお話ししましたが、『佳肴 季凛』でお出ししているデザートは、どれもお手製のものです。そんな様々なデザートについては、こちらをご覧下さい。
デザートを作るのに、欠かせないのが、リキュールで、棚には、
所狭しと、色んなリキュールが置いてあります。
使う果物や素材に応じて、使い分けるだけでなく、使う時も、50~100cc程度ですので、自然と、種類が増えてしまいます。取り出してみると、
全部で、これだけありました。先ず最初が、
『アップルバレル』という林檎のリキュールで、林檎のアイスを作る時に、使います。
蜜柑などの柑橘類のアイスなどを作る時に使うのが、
オレンジのリキュールの『コアントロー』です。実は、この『コアントロー』の意外な使い道が、西瓜のアイスです。『コアントロー』を使うことによって、西瓜特有の青臭さが消され、香りもまろやかになり、後味もすっりするのです。
西瓜は、読んで字の如く、ウリ科のものですが、同じウリ科のマスクメロンのアイスを作る時に使うのが、
メロンのリキュールの『ミドリ』で、ミドリとありますが、原産国は、何故かメキシコです。
メキシコと同じ中南米が原産のお酒と言えば、ラムがあります。そのラムをベースにしたのが、
『マリブパイナップル』というパイナップルのリキュールで、シャインマスカットのアイスに使うのが、
『ミスティア』というフランス産のマスカットのリキュールです。
この時季、当店でお出ししている桃のアイスの下拵えと仕上げの時に使うのが、
桃のリキュールです。この“ルジェ”というシリーズには、
苺や、
ブルーベリーのものがあります。また、このシリーズには、沢山の種類があり、自分が使ったものがないものも、勿論あります。
これまでにお話ししたものは、どれもフルーツのリキュールでしたが、当然、それ以外のものもあり、チョコレートやココアを使ったデザートを作る時には、
『モーツァルト』というチョコレートのリキュールや、
コーヒーのリキュールの『カルーア』を使います。
コーヒー、ナッツ、種子系のリキュールの中では、アマレットが有名で、その中でも、『ディザローノ アマレット』を使います。
アマレットは、アーモンドのような香りがするので、アーモンドが原料のように思われがちですが、実際には、杏仁(杏仁豆腐にも使われる杏子の核)を使用しているものが主流です。
この『ディザローノ アマレット』を使うのは、ココナッツミルクや黒胡麻などの種子系のデザートを使う時です。
ここまでお話ししたのは、どれも原産国が外国のものでしたが、唯一の国産が、
『ヘルメス』という緑茶のリキュールで、抹茶のアイスやムースなどに使い、当店のような日本料理店には欠かせないリキュールの一つでもあります。
香料が入っているリキュールを使うことで、それらしく仕立てることは出来ますが、フルーツをはじめとするメインの食材を、ふんだんに使うことが、美味しいデザートを作る上では、一番大事で、どこまでいっても、料理というものは、素材ありきなのです。
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富士宮市民プールへ
夏休みに入ったこともあり、下の娘から、「どこかへ、連れてけ!」光線を、何気に浴びる毎日で、定休日の月曜日が近づくと、その攻撃は、嫌が応にも増してきます。そんなこともあり、少しでも来週以降の攻撃を弱めるために、今日は、
富士市のお隣の富士宮市にある『富士宮市民プール』に、行って来ました。夏休みとはいえ、平日ということもありましたが、
券売機に並ぶ人はおらず、すんなりと入場し、コインロッカーに、
荷物を預けました。自称“富士市でふぐが一番好きな料理人”の自分ですので、どこへ行っても、ふぐの語呂にちなみ、つい29という数字を探し求めてしまいます。
仕度を終え、
いよいよ場内へ。富士山を、
こんな風に眺められるのも、世界遺産のあるまちを謳う富士宮市ならではのことです。
夏休みは始まったばかりで、まだまだ「どこかへ、連れてけ!」光線を浴びさせられそうで、早くも来週の作戦を、女将兼愛妻(!?)の真由美さんと練り始めたのですが、なかなか策は、浮かびません。
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土用の丑の日つれづれ
『土用の丑の日』の昨日も、
沼津の魚市場に、仕入れに行って来ました。『土用の丑の日』だからいって、仕入れの目的は、鰻(うなぎ)ではありません。
最初に立ち寄った問屋では、
和歌山県産の鱧(はも)を、
選別しているところで、
このうちの2本をはじめ、虫の息状態の3本も、
その場で〆てもらい、合計5本の鱧を仕入れました。
その後、
構内の活魚売場に行き、
大分県産の2本の鱧を、仕入れました。結局、総合計で、
7本の鱧を仕入れたのですが、昨日も、市場に来たこともあり、これ以外にも仕入れるものは無かったので、そのまま帰ろうと思ったものの、いつものように、別の売場に行きました。
そこで、ある問屋の前を通ると、
店先に、
片身ずつに卸してあった勝浦産の鰹があり、かなりのお値打ち価格でしたので、
骨付きの方を、賄い用に、仕入れることにし、この時の気分は、早起きをして、三文の得をしたような気分でした。というのも、鰹は、自分が一番好きな刺身だからです。そんな“鰹愛”については、こちらをご覧下さい。
予定通りの鱧、予定外の鰹を仕入れ、魚市場から帰ることにしました。帰り道、これまた昨日同様、
宅配便の営業所に寄り、築地から届いた鮪を受け取り、
【佳肴 季凛】に戻りました。今日の鮪は、
青森県大間産の生の本鮪でした。大間は、夏から、年明けぐらいまで、水揚げがある産地で、最も有名な産地の一つでもありますが、これまでに何度もお話ししているように、間違っても、大間が一番ではありません。
さらに言えば、鮪類は、時季、漁法、個体差によって、かなりの差が出るので、どこの産地が一番だと言うことは出来ません。また、産地という名前を有難がっているうちは、本物を知ることは、出来ません。もっとも、これは、鮪だけに限ったことではないのですが・・・。
そうこうし、ランチの営業も終わったので、お昼にすることにしたのですが、食すは、今朝の鰹で、
背の部分を、このように包丁し、
鰹丼にしました。
左側のは、女将兼愛妻(!?)の真由美さんのもので、サーモン、帆立入りの三色丼でした。いつものことながら、自分の鰹の食べっぷりには、真由美さんは、呆れるばかりで、今日も、然り。ここまでくると、鰹がおかずではなく、主食で、御飯がおかずとしか、自分でも言い様がありません。
また、仕事を終え、
晩酌には、再び鰹を、食しました。
鰹好きの自分にとっては、これぐらい食べて、ようやく納得しました。かくして、『土用の丑の日』の日は、鰻には、縁もゆかりもなく、終わったのでした。
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和歌山県&愛知県産の鱧(はも)
今朝は、
沼津の魚市場に仕入れに行って来ました。ただ、先週末の台風と三連休の影響もあり、鱧の入荷も心配でしたが、
山口県産や、
大分県産の鱧が、入荷していました。今日は、鱧料理の御予約もあったので、昨日の時点で、前もって、注文をいれておき、別の売場に向かうと、
既に、
このように用意されており、この鱧は、
和歌山県産のものでした。その後、ひと通りの仕入れを終え、魚市場を後にしましたが、【佳肴 季凛】に戻る前に、宅配便の営業所に寄り、
愛知県からの荷物を受け取りました。
【佳肴 季凛】に着くと、
袋から取り出し、和歌山県産の鱧は、
そのまま水槽に入れておきました。また、発泡スチロールの中には、
活〆にされた愛知県・三河一色産の鱧が、
6本入っていました。これらの鱧は、このようにお腹を裂き、胃袋だけ取り除いてもらってありました。
このようにしてあるのは、胃袋に餌が残ったまま、死んでしまうと、その臭いが、身についてしまい、使いものにならないからです。ですので、活〆でも、死んだ鱧を扱う時には、どうしても注意しなくてはならない点でもあります。
そのまま、腸を抜き、水洗いしてから、
卸し終えたら、とりあえず冷蔵庫へしまいました。その後、水槽に入れておいた鱧を卸すために、
水槽から取り出し、
〆てから、
脊髄に、細い針金を突き刺し、神経を抜きました。ただ、鱧は長い魚ですので、
尻尾の方からも、このようにしました。このようにすることで、死後硬直を遅らすことが出来、身の鮮度を保つことが出来るのです。
ただ、今日の鱧料理のお客様は、お昼でしたので、戻ってきた時点で、〆ても、問題は無いのですが、より美味しいものをお出しするためには、出来るだけ、その時間を考えなくてはなりませんし、分かっていながら、そのようなことをすれば、当然、料理の味は落ちます。
「料理ではなく、美味しい料理を作るのが、料理人の仕事」ということを、師事した親方に教えられた自分としては、出来る限り、ギリギリのところで、仕事をしたいので、どうしても、手間がかかることもあります。これをないがしろにすることは、確信犯というより、料理人の魂を売っているとしか、思えないのです。
水洗いをした和歌山県産の鱧を、
卸し終えたら、
今度は、骨切です。落とし用に、
骨切りをし終えたら、今度は、愛知県産の鱧を、
鱧しゃぶをはじめ、
天ぷらや、
御食事の鱧茶漬にするために、骨切りをし、準備をし終えた頃には、お昼の営業時間となり、御予約の鱧料理のお客様も来店し、落としにした和歌山県産の鱧をはじめ、
生の南鮪(オーストラリア)、小肌(佐賀)、帆立(北海道)の四種盛りをコースの刺身としてお出しました。
お昼の営業が終わると、
アラの部分を、出汁を取るために、掃除したり、
焼いたりし、ようやくお昼の仕込みは、終わりました。
今日のお話しをお読み頂ければ、当店の鱧料理のページにも書いてあるように、鱧料理が、その日の仕入れや仕込みに、大きく左右されることがお分かり頂けると思います。
このことは、鱧に限らず、天然素材ゆえの避けられないことでもあるので、ご理解を頂けると、幸いです。
パイナップルのアイス
これまで、色んなアイスを作り、お出ししていますが、
今日は、パイナップルのアイスを、初めて作りました。
昨日のうちに、ある程度まで、下拵えをしておきました。皮を剥いたら、
このように包丁をしました。これとは別に、パイナップルの缶詰を用意し、
シロップと果肉の部分に分け、シロップを、
包丁したパイナップルの入ったバットに入れました。シロップだけでなく、
パイナップルのリキュールも、
注ぎ、
蒸し煮にしました。
パイナップルは、ブロメラインというタンパク質を分解する酵素が含まれており、加熱することによって、その酵素を壊し、アイスの素を作るときに使うゼラチンの凝固力を、弱めないために、このようにするのです。
ゼラチンは、動物性のタンパク質を原料にしているので、パイナップルのようなタンパク質分解酵素の含まれる果物は、加熱してからでないと、ゼラチンは、固まりにくいのです。ただ、加熱しないままでも、生のものを、固めることの出来る凝固剤もあります。
この酵素の働きで、パイナップルを、酢豚などに入れることで、肉が柔らかくなり、タンパク質が分解され、胃腸の負担を軽め、消化吸収を高めることが出来ます。また、パイナップルを食べ過ぎると、舌がビリビリするのも、ブロメラインによる刺激が原因なのです。
このような酵素を含む果物は、パイナップル以外にも、、キウイ、マンゴー、パパイヤ、メロン、無花果(いちじく)などがあり、特に強い酵素を持つのが、パイナップル、キウイフルーツ、無花果などです。
蒸し煮にしたパイナップルは、
リキュールとシロップに分けてから、
フードプロセッセーにかけ、
再び、シロップとリキュールと合わせました。これで、
パイナップルの下拵えが終わりました。
ここまでを、昨日までやっておき、明くる日の今日は、アイスに仕上げるように、仕込みをしました。先ず、
鍋に、クリームチーズ(写真・左)とマスカルポーネチーズ(同・右)を入れ、よく混ぜ合わせたら、
卵黄を入れ、さらに混ぜ合わせます。そこに、
上白糖、
豆乳を入れ、伸ばしていきます。牛乳でも構わないのですが、マクロビオティックを基本に据えていることもあり、出来る限り、このようにしています。
豆乳を入れ終えたら、
水でふやかした板ゼラチンを入れ、
火にかけ、ゼラチンが溶けたら、
濾してから、
下拵えの時に使ったパイナップルのリキュールと、
パイナップル味のカルピスを加えました。どちらも、風味づけのためですが、カルピスを加えたのは、甘味を、さらに加えるためです。
氷水の入ったボウルで、冷ましながら、よく混ぜ合わせます。
冷めたら、ホイップした卵白(写真・左)と、生クリーム(同・右)を、
加え、さらに混ぜ合わせます。この時、味を確認したところ、甘味が足りなかったので、
再びカルピスを加え、
アイスの素が、95%出来上がりました。
最後に、昨日シロップだけ使った缶詰の果肉を、賽の目に包丁し、
アイスの素に入れ、仕上がりました。今度は、これを、アイスクリームマシンにかけ、
固まったら、
バットに移し、ようやくパイナップルのアイスが、仕上がりました。
お出しする時は、ディッシャーで、形をとってから、
このように、盛りつけます。
これまでに、何度もお話ししていることですが、日本料理店のデザートといえば、かつては、時季の果物を切って、盛り付けるだけのものでした。時が流れ、スイーツやパティシエという言葉を、よく耳にする現在では、そのようなものは、通用しなくなってしまいました。
かといって、日本料理らしさを逸脱したものを、作ることには、常々疑問を持っています。このことは、デザートに限ったことではなく、伝統を受け継ぎながら、時代に合い、お客様に喜ばれる料理をお出しする必要があります。
日々、厨房で、仕事をしていても、なかなか答は出ません。それどころか、答の出ない問題を、自ら作ってしまうというのは、まだまだ努力不足であることだけは、現時点での正解であることは、間違いありません。
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当店オリジナル料理の“サラダ素麺”をメインにした、清涼感溢れるコースとなっており、食後のお飲物付です。