茶碗蒸し
自分が一年に何回しか作らない料理が、いくつかあります。旬が限られているものは、当然のことですが、旬のないものも幾つもあります。
旬のないものの一つに、茶碗蒸しがあります。茶碗蒸しといえば、日本料理の定番かもしれませんが、自分は全くもってそうは思いません。逆に、「何故いつも茶碗蒸しがついているの?」と聞き返すことがよくあります。ですから、自分はコースメニューに、入れたこともありません。
”佳肴 季凛”で茶碗蒸しを作るのは、お子様料理の一つとして作ることが、殆どです。
ただ、茶碗蒸しを一般の家庭で作るのは、なかなか難しいと思うので、作り方をお話ししたいと思います。
鰹だしに、薄口醤油、塩、酒、みりんを入れて、味を調えます。沸いたところに、鰹節を入れ、火を止めます。”追い鰹”をすると言います。
この出汁を冷まします。
この冷めた出汁と、卵を合せるのですが、おそらくその割合が、一般の方は分からないと思いますので、これを機会に是非覚えてください。
卵(L玉)一個に対して、出汁が150~160ccです。
中に入れる具は、それこそお好み次第ですが、自分は百合根が入っていると、”プロ”の茶碗蒸しらしいと思っています。
具特に、海老や鶏肉のような動物性の具を入れるときは、一度酒と醤油で洗ってください。ちなみにこれを”むら洗い”と言います。こうすることで、生臭みが抜けます。
また、あれもこれも入れるのは、あまり好きではありません。
今回の具は、海老、帆立、里芋、椎茸、三つ葉です。里芋なんて珍しいと思われるかもしれませんが、これがなかなかの食感です。
これに、先ほどの卵と合せた出汁を注ぎま、蒸し上がった蒸し器に入れます。
この時の火加減は、中火が目安です。蒸し器にいれること、12,3分です。その時の火加減、蒸し器の容量によって、多少差があります。
また火が強すぎると、”す”が入ってしまうので注意して下さい。
出来上がりの目安は、串をさして、透明の汁が出てくるようでしたら、OKです。
こんな感じに出来上がりました。ゆずの皮をあしらうと、食欲をそそります。これから寒くなる季節に、ご家庭でも是非、”佳肴 季凛”直伝の茶碗蒸しを、お作りになっては。
志村
開店
お蔭様で、一昨日の9月18日に、”佳肴 季凛”は無事に、開店することができました。
その際、身に余る以上のお花を頂戴し、万感の想いで一杯です。
店の外には、これほどまでの、生花を置かせていただきました。
一方、こちらが店内です。
これほどまで、お花を頂けることなど、夢にも思っていませんでした、普段の自らの”悪態ぶり”からすれば、せいぜいこの半分程度が、関の山だと思っていました。
また、何よりもうれしかったことが、開店当日、一つありました。それは、浜松から、自分が師事した親方が、わざわざ来てくれたのです。
昼の営業が終わった頃、外を眺めると、親方がいるのです。生花をもらえるということは、承知していたのですが、まさか店まで来てくれるとは、想像もつきませんでした。
親方はカウンターに座り、2,3杯焼酎を飲むと、「志村君、タクシー呼んで、帰るから。」
「・・・・・。」
滞在時間、わずか一時間程度。浜松から新幹線に乗って来たにもかかわらず・・・・・。
この親方は、無口で、自分以上に不器用な人柄ですが、若い衆の面倒をみることにかけては、すごい人です。こんなことは、なかなか出来るようなことではない筈です。
そんなこんなで、皆さんに支えられ、季凛は開店致しました。どうぞ、宜しくお願いします。
志村
季凛の外観工事中
昨日から、季凛の外観の工事が、どんどん進んでいます。
昨日の朝から、職人さんたちが、大きな木槌をもって、頑張ってくれています。その後は、こんな風に色が、付けられました。
この後ろに、手前にある茶色の、角材が立てられていき、大きな柵が、出来上がりました。こちらは、向かって左側です。ここには、以前、大きな狸が、いました。このお話し は、以前しました。
まだ、狸は、寝ています。冬眠ならぬ、夏眠といった感じです。
向かって右側の、正面はこんな感じに柵が、立てられました。まだ色は、塗られていません。
倒れてこないよう、つっかえ棒がしてあります。地震の多い、静岡県だけあって、防災の日の教訓が生かされているようです。
さらに、季凛の駐車場の、下り側から見ると、こんな感じです。
今日の様子も、引き続き写真を撮ろうとしたのですが、季凛店内の準備に、追われ、出来ませんでした。
写真なしのお話しになってしまいますが、昨日よりも、きれいに仕上げられつつあります。職人さんによれば、もっと変わるとのこと。
明日が楽しみです。
志村
仕上がり間近
以前、季凛の内装の様子については、何度かお話ししました。照明も新しくなり、こんな感じになりました。
先ずは、カウンター。
写真右側の、茶色いところに、夕席の際、日替わりである、”季の肴”を書いた額を置きます。額といっても、たいそうなものではありません。
中食(ちゅうじき)、八ツ時(やつどき)では、日替わりである、”季の菓”を、書いて置こうかと思っています。
カウンターを、反対側から、見たところです。今までとは趣がガラリと変わっています。前の様子は、皆さんの、ご記憶にお任せします。そういう自分も、記憶の中です。
そして、今回のリニューアルの目玉の一つだった、テーブル席は、こんな感じになりました。
マクロビオティックが、季凛の一つの柱でもあるので、自然をイメージ出来るように、窓も大きくして、採光溢れる雰囲気にしました。
近日中に、床が張られ、テーブルも入ります。いよいよ、季凛の、デビューが近づいてきました。
志村
開店日
命名
先日、新店の名前の前に付ける、接頭語というか枕詞についてお話ししましたが、今日は、肝心の店の名前(屋号)のお話しです。
昭和が終わって、平成に変わった時、当時の小渕官房長官(故人)が、“平成”と書かれた額を、掲げた心境とでも言いしょうか。
新しい名前は、季凛と言います。”きりん”と読みます。
こちらが、昨日、届いた新しい名刺になります。
佳肴と違って、自分が作った造語です。
”季を尊び、凛とす”。これがその意味です。
分かり易く言うと、四季折々の素材を、大切にして、心身共々引き締めて、料理に向かうということです。
これまで、そしてこれからの自分の料理人としての、スタイルを、今まで以上に、具現化するための思いを意味に込めました。
”佳肴 季凛”。
これから、宜しくお願いします。
志村
追伸 先日、静岡で会った詩人のお話しをしましたが、その人に、書いてもらった色紙です。その詩人曰く「(私は、)書家でないから、そんなの書けない。」
それでも、敢えて書いてもらいました。
新しい名前を、お話しして、ある意味、胸のつかえがとれました。今更ですが、隠し事の出来ない性分ですから。
枕詞
飲食店はどんなタイプのお店でも、屋号の前に、その業種や業態を表現する言葉がついています。言うなれば、枕詞とでも、言いましょうか。
今日は、新しいお店につける枕詞について、お話ししたいと思います。
”佳肴”といいます。”かこう”と読みます。辞書にも載っている、ちゃんとした熟語です。
その意味ですが、美味しい料理とか、ご馳走のことです。
和食の店というと、日本料理とか、和食処とか、割烹といったものが一般的です。また、看板料理をつけているお店も、よくあります。とんかつとか、ふぐとか、すっぽん等、色々あります。
今更ですが、不肖 志村が、オーソドックスな付け方をするわけが無いのは、想像に難くありません。
自分でも、かなり悩みました。良い食材をもとめてやまない性分ゆえ、”馳走”とつけようとも思いました。
ちなみに、”ご馳走様”とよくいいますが、本来は、作り手が、客人をもてなすために、食材をもとめて、駈けずり回る姿勢に、対しての評価を表した言葉でした。
また、佳肴は嘉肴とも書きますが、佳を使ったのも、意味があります。
佳には、にんべんがつきますが、嘉には、つきません。にんべんがついてないと、人でなしになってしまいます。だから、佳を使ったのです。
料理は、作り手と食べ手という、人がいてこそ成り立つものです。
少しややこしい話になってしまいました。
枕詞でさえ、こんな感じになるのですから、屋号に関してはなおさらです。この次は、いよいよ、新しい名前(屋号)の、お話です。
乞うご期待!
志村