餃子バット
ご覧のように、”バット”です。ステンレス製です。
こちらが、そのふたです。このふたに対して、”バット”本体のことを、”み”とも呼んだりします。
一般家庭では、”バット”よりも、プラスチック製の”タッパー”を使うことが多いかもしれませんが、我々のような飲食店では、”バット”を多用します。
というのも、ステンレスの方が、プラスチックに比べ冷えるので、中の食材や調理したものの”もち”がいいのと、ふたとみを別々に購入できるからです。
”タッパー”とお話ししましたが、正確には”タッパーウェア”のことです。 ちなみに、”タッパーウェア社”という会社が製造していて、”タッパー”、”タッパーウェア”は、同社が商標登録しています。
ところで、このバットよく見ると、こんな風に足が付いています。
何のために足が付いているのでしょうか?
切りつけた刺身です。出しっぱなしにするわけにはいかないので、盛り付けるまで、冷蔵庫にしまっておかなければなりません。
しまう時はこんな風に、足が付いているので、そのまま重ねられるのです。自分も初めて、この状態を見た時、「さすが、プロが使う道具は違う」と驚いたものでした。
さらに、驚いたというか、変わっているのが、この”バット”の名前です。何という名前でしょうか?
”足つきバット”・・・。違います。
正解はこちらの写真を、ご覧下さい。
”餃子(ギョウザ)バット”という名前です。使い方同様、この名前にも最初、自分も驚いたものでした。
名前の通り、焼く前の餃子を並べて重ねてしまうのが、本来の使い道です。ただ、日本料理では、先程のように使ったり、用途は様々です。
我々プロにとっては、ごく普通に使っているものでも、一般の方には不思議に映るようです。よかったら、ご家庭でも使ってみます?
志村
器出し
今日の本題をお話しする前に、お知らせです。”佳肴 季凛”のHPの”旬の素材”に掲載されている素材が、変わりました。先ずは、こちらを。
日本料理で使う器は多種多様であることは、先日お話ししました。会席料理のコースで使う器は、料理だけでも、お客様一人につき最低でも、10個です。グラスなども入れれば、時には20個以上使うこともあります。
コース料理は、予約のお客様が大半なので、あらかじめ器を準備しておきます。
一から十まで、自分でやらないと気が済まない自分ですが、その準備の殆どは、女性スタッフにお願いしています。ただ、どの器をどの料理に使うかは、その時によって変わります。
自分で言うのもなんですが、”その時”がくせ者です。というのも、自分は同じ器でも、料理によって変えて使うことは、ごく当たり前で、女性陣には、迷惑をかけることもしばしばです。というより、心の中では、目の敵にされているはずです。
先ず最初に、棚から使う数だけの器を、出します。
それを、こんな風に、”番重(ばんじゅう)”と呼ばれる箱というか、ケースの中に、並べていきます。当店で使っている”番重”は、この薄い黄色の箱です。
ただ並べるわけではありません。器には前後、左右があるので、向きをそろえなくてはなりません。
場所が狭くて、置ききれない時は、台車に載せておきます。
ちょうど、並び終わりました。いよいよ料理の盛り付けの開始です。
どの器にどんな料理が、盛り付けられるのかは、お席についてのお楽しみということで・・・。
志村
何故か一枚
日本料理は、色んな種類の器を使います。色、形も様々なので、器を見ているだけでも、十分楽しめます。
”佳肴 季凛”にも、大小様々の沢山の器があります。
どの器も、最低でも10枚は揃っています。多いものでは、40枚位あります。
別の棚を開けてみます。
ご覧のように、色、形が不揃いです。殆どが一枚、あっても4,5枚です。この棚に入っている器の一部がこちらです。
ところで、何故数が少ないのでしょうか?
限定もの?割れてしまって、残った一枚?
これらは、器屋さんが、サンプルとして店内に置いてあった器で、一定の時期が過ぎると、格安で売るのです。格安なのは、数が少ないからです。
これらの器を、自分は沼津の魚市場にある、芹沢パッケージという、器屋というより、厨房道具の専門店で、買ってきます。
今日、買ってきたのが、先程の写真にも写っていたこの器です。
この器を真上から撮ったのですが、よく見て頂くと、周りの柄がついた箇所が、均一になっていないのに、気付かれると思います。
不良品ではありません。横から見ると、お分かり頂けます。
盛り付ける時、手前になる方が、低くなっています。こういう変わった感じの器が、自分の好みです。「良いな。」と思う器は、殆どの場合、値段も高く、この器も例外ではありませんでした。
ですが、一枚しかないので、値段も正規の四分の一でした。ここぞとばかり、つい買ってくるのですが、一枚しかないので、単品ものの注文の際には、使えるのですが、コース料理の時は使えません。
個人的な好みで買って来るだけでなく、一番の目的は、写真撮影用です。同じ器を、違った料理で使うわけにはいきません。日本料理では、同じ器をコースの中で、一度しか使いません。ですから、普段と同じようにするのです。
高い器を使うには、限度がありますが、出来る限り、良い器を使いたいものです。かの有名な北大路魯山人が、生前言っていたように、「器は料理の着物。」である以上、自分は料理と同じように、重きを置いています。
ですから、今日のように、気にいった器があると、買うというより、買いすぎてしまい、月末に来る請求書を見て、青息吐息になることは、よくあることです。
志村
下見
今日は、ランチの営業を早めに切り上げて、富士市吉原にある東京電力へ行って来ました。電気代が未納で出頭してきた訳ではありません。
以前お話ししましたが、1月26日(月)に、マクスさん主催の、IH料理教室
の会場の下見に行って来ました。
お陰様で、参加人数も予想以上で、今から緊張しています。面識のない方と、お話しするのは、商売柄慣れてはいるのですが、人前に立ってお話しをするのは、別物です。
この部屋が会場で、マクスの社長と奥さんが東電の方と打ち合わせしているところです。
こちらのIHクッキングヒーター付の調理台で、参加者の方が、料理を作ります。
一方こちらが、”先生”である自分が立つ調理台です。
”先生”・・・・・。この響き、照れくさいような、格好いいような。講師と呼ばれた方が、平常心でいられるのですが・・・。
”先生”。う~ん、「余は満足じゃ。」もうそれだけで、十分です。
しかしながら、そうは問屋が卸さないのが現実です。というのも、講義内容をここにきて、変更することになったからです。
近いうち、ブログでお話しするつもりなのですが、我々料理人は、いわゆるレシピを、多用しません。勿論先日お話ししたような、デザートや、たれのようなものには、レシピがあり、それを基に作ります。
ただ、味噌汁のようなものは、その時に応じて作るので、”何が何cc”とか、”何g”みたいなことは、全く見当がつかないのです。それこそ、大体ってやつです。
今回の献立には、”和風ミネストローネ”という汁物が入っているので、その分量を、「こんな感じです。」みたいに済ませるわけに、いかなくなったのです。
帰りの道すがら、マクスの社長に、「普通の人に、わかりやすく説明するのが、”先生”の役目ですから、お願いしますよ。ねぇ、”先生”。」と念も押されました。
それをやるのが、”先生”というより、料理人の使命と思い、慣れない計量カップとスプーンと、にらめっこするので、今日はこの辺で・・・。
志村
ペティナイフ
志村さんが、今日使った包丁を研ぎ終えたところです。最低でも一日に4,5本は使っています。
実を言うと、この包丁の中には志村さんが使っていない包丁があります。ということは・・・。そうです。私が使っているのです。借りているというのが、本当のところです。
これがその包丁で、ペティナイフと呼ばれる包丁です。先程の写真の中でも、これだけが小さいのがお分かりいただけると思います。長さは18センチ程で、果物ナイフと対して変わらない長さです。
ただ私が切るものといえば、豆腐や三つ葉などの、誰でも出来るようなものばかりですが、それでも去年の暮れには、りんごの皮をむきました。というより、むかされました。その時の様子は、こちらをご覧下さい。
志村さんが手入れをしてくれるので、切れ味は抜群で、手を切らないかといつもハラハラしながら、仕事をしています。でも、志村さんによれば、切れる包丁のほうが、仕事がきれいに、速くできるというのです。言われてみれば、そんな感じです。
また、切れる包丁で指などを切っても、治りが早いとも、志村さんが言ってました。包丁を使う機会が少ないので、手などを切ることは、めったにありませんが、それだけは避けたいものです。
真由美
追伸 かえって志村さんのほうが、切る機会が多いようです。それだけ使う時間が長いからだと思いますが、志村さんは、「まだ、手を切っても痛いと思わないからで、痛いと感じるようになったら、切らなくなる。」と言ってます。そんなものなんですかね~。
出刃包丁
料理人にとって、何よりも大事なのが、包丁です。自分の場合、普段使う包丁だけでも、5,6本あります。使わないものも含めると、全部で15本ほどあります。
また、用途が同じでも、何種類かそろえているものも幾つかあります。その一つが、出刃包丁です。
一番右の出刃包丁は、ステンレス製のものです。ステンレスと言っても、一般家庭で使うものと異なり、”焼き”も入っているので丈夫です。なによりも、錆びないのが、一番の特徴です。
用途としては、魚の頭を落としたり、かにを包丁する時など、固いものを切るのに使っています。刃こぼれしてもお構いなしです。
真ん中の出刃包丁は、ふぐの皮のとげを取る時専用の包丁です。ふぐの皮の
とげのお話しは、こちらを。
ですから、これからの時季に主に使う期間限定の包丁とも言えます。またこの包丁は、”本焼き”といって、全てが鋼で出来ているので、刃の切れ味の持ちも良いのが、何よりです。それゆえ、値も張ります。最低でも、福沢諭吉のお札が、10枚分です。
一番左の出刃包丁は、普段魚を卸す時に使います。ふぐ、ひらめに始まり、あじ、いわしのような小魚に至るまでです。
この包丁は買ってから、10年以上経ちます。魚をそれほど扱わない持ち場の時は、殆ど使うこともありませんでしたが、それでも十分元は取った筈です。ちなみに、この包丁の値段は、”本焼き”ではないので、例のお札が、3枚もあれば、買えます。
買った当時は、まだ鮨屋の見習いの頃だったので、そんなに高い値段が出せなかったのが、本当のところです。
ただ、今度この大きさの出刃包丁を買う時は、”本焼き”にするつもりです。長い間使うので、良いものを買うことにしているからです。
包丁を買う時は、いつも東京の専門店に行き、手にとって、買うことにしています。地元の富士市や富士宮市にも、包丁を扱っているお店も、あるのですが、同じものでも、自分の手になじむものと、そうでないものもあるので、わざわざ、東京まで行くのです。
沢山魚を、卸して、毎日研いでいれば、包丁も小さくなるので、早ければ来年の今頃、買い換えることになりそうです。早く、新しい包丁が欲しいなぁ~。
志村
追伸 我々料理人(特に日本料理の場合)は、”切る”とは言わず、”包丁する”と言います。
作家物
”佳肴 季凛”開店まで、あとわずかです。準備も滞りなく(!?)進んでいます。食材、道具類の納品もほとんど、終了しましたが、一つだけ”まだ”のものが、ありました。
それが、今日の夕方に、納品されました。
これらの器です。季凛のための、季凛だけの器です。いわゆるオリジナルです。
もっと言うと、作家物です。これらの器を作ってくれたのが、室伏さんです。
室伏さんの工房は、季凛から徒歩5分のところにあります。そちらへは、何度もお邪魔したことがあり、いろんなお話しをしたことがあります。”ものつくり”に関することになると、お互い共鳴する部分も多いので、時間を忘れてつい話してしまいます。
そして、結論はいつも一緒です。
それはともかく、こちらが箸置きです。
室伏さんの、技法は”練りこみ”という特殊なものです。器というより、芸術作品のようです。
さらに、こちらが、刺身用の小皿です。
バラをモチーフとした絵柄です。使うのがもったいないような気もします。
最後がコーヒーカップです。
以前から自分は、自らのスタイルで料理を作る舞台が、獲られたら、作家物の器を使うことを、望んでいました。
また何よりも、今回の室伏さんのように、不肖・志村の料理を好んでくれる方に作ってもらえたことが、とにかくうれしいのです。
料理人にとっては、ある意味夢のようなコラボともいえます。季凛に見えたら、料理同様、味わってみて下さい。
ところで、今度は何を作ってもらおうかなぁ~。
志村
フル回転
”佳肴 季凛”開店に備え、着々と準備が進んでいます。仕込みも同様です。前回お話ししたように、季凛では、八ツ時(やつどき)という、ティータイムを設け、アイスクリームなどのデザート類を出すので、特にその仕込みに追われています。
メニューをご覧頂ければ、お分かりかと思いますが、アイスは5種類あります。そのため、今回のリニューアルにあわせ、伝家の宝刀とも言うべき、機械を入れました。
こちらが、その機械です。アイスクリームを作る専用の機械で、”アイスクリーム・マシン”といいます。
羽がついているボールのところに、アイスクリームの”種”を入れ、周りが段々と冷えていきます。その時、羽がグルグル回転します。
その時の”種”の温度、気温によって、差がありますが、固まるのに、30分程度かかります。一度には、出来ないので何回かに分けるのですが、それでも2時間もあれば出来ます。
以前は、ボールに”種”を入れたまま、冷凍庫に入れ、固まってきたら、ハンドミキサーでかき混ぜ、また入れて、かき混ぜての繰り返しでした。この作業を5回くらいしていました。仕上がるのに、最低でも3時間はかかっていました。
それに比べれば、今は、楽チンそのものです。自分の代わりをしてくれ、人一人分の仕事をしてくれます。
アイスクリームをはじめ、季凛の料理は全て手作り、自家製です。「今は既製品でも、良いものがあるから、そこまでしなくても。」と言う人もいます。
けれども、自分に言わせてもらえれば、沢山あるお店の中から、季凛を選んできたくれたお客さんに、自分が作った料理を食べて、喜んでもらうのが、何よりの喜びです。
そうして、お金を頂くのが、料理人のあるべき姿だと思っていますし、それをするために、季凛をやるのです。自分の納得いく食材で料理して、自分が美味しいと思うものを、お客さんに食べてもらうのが、自分の生命線です。
今日もこれから、アイスを仕込みます。今日は1種類しかつくりませんが、昨日までは、それこそフル回転でした。
ところで、肝心のアイスの写真ですが、実物は季凛に来て、見て、食べて下さい。
志村
こちらも進行中
”佳肴 季凛”(かこう きりん)の開店準備も、着々と進んでいます。内外装のお話しについては、ここ最近何度かしていますが、料理人志村にとって、それ以上に神経を使うのが、厨房に関することです。
今回の改装では、厨房については、一切しませんでした。とはいっても、厨房の道具類も、2階に置いたりしていたので、それらを、元の場所に戻さなくてはなりません。しかも、これがなかなかの重労働です。
ここ2日間で、半分以上片付けることが、出来たので、気分も落ち着いています。
器も、棚に無事収まりました。こういう時に、割ったりしがちですが、幸いにも、そのようなことにもならず、一安心です。また、今回の改装にともなって、新しい器も新調しました。
今回に限らず、新しい器を選ぶのは、食材選びと同じくらい、ワクワクします。
ただ、自分が「良いな。これ欲しい。」と思う器に限って、結構な値段で、心の中で、「もっと安くならないのかなぁ~。」と、つい思ってしまいます。
器と料理は、切っても切れぬ関係で、美味しい料理には、やはり良い器が似合います。”器は料理の着物”とは、よく言ったものです。
また、道具類も、もとの場所に収まりました。
器同様、道具類も新調します。今回はじめて、購入するものもいくつかあります。これまた、楽しみです。近々、納品されますので、またお話ししたいと思います。
こういう準備が進んでくると、実際に料理を作っていなくても、新しい料理や、ヒントが浮かんでくることも、しばしばです。
厨房にいると、料理人としての、”勘”が、働くのかもしれません。ある意味、慣れとはすごいものです。
また料理から離れていると、「ちゃんと今までのように、作れるのかどうか。」と、不安になったりもしましたが、そんな不安も、今では全くなく、今日から少しずつ、仕込みを始めていきます。
”まだ”なのか、”もう”なのか。”佳肴 季凛”開店まで、2週間を切りました。
志村