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もっとおいしいお話し

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これまた、鯛

 昨日は、”真鯛”のお話しをしました。
 
 今朝の沼津魚市場には、同じ仲間の”黒鯛”が沢山入荷していました。
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 手前の生簀も、”黒鯛”です。
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 これほど沢山の”黒鯛”が入荷しているのも、昨日お話しした”真鯛”と全く同じ理由です。
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 今朝、仕入れて先程締めたばかりの”黒鯛”です。大きさは、1、1キロです。”黒鯛”の姿、形は”真鯛”によく似ています。違うのは、その色です。名前の通り、色は黒です。
 こちらが、”黒鯛”の刺身です。
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 当然、”真鯛”の味と違います。”真鯛”に比べ、”黒鯛”は磯魚に近い香りがします。
 磯魚とお話ししましたが、磯にすむ”鯛”で、”石鯛”、”石垣鯛”がいますが、これらほど独特の香りはありません。
 ちなみに、”鯛”と名のつく魚は、200種類とも言われていますが、本当の鯛の仲間であるタイ科の魚は、10種類くらいしかいません。”真鯛”と”黒鯛”は、タイ科ですが、”石鯛”や”石垣鯛”は違います。
 今お話しした”鯛”は、どれも”佳肴 季凛”でお出ししたことがあります。それぞれが、特有の味わいがあり、どれも美味しい魚です。ただ、個人的な好みでは、”真鯛”、”黒鯛”、”石鯛”、”石垣鯛”の順です。
 この時季、”黒鯛”も多く入荷するので、”真鯛”同様、旬を味わって下さい。
  志村
 

鯛だらけ

 先日の沼津魚市場のセリ場(活魚)です。
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 生簀の魚は、全部鯛です。しかも、魚の王様の”真鯛”です。
 こっちも、全て”真鯛”です。
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 その手前も、全て”真鯛”です。
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 その先の生簀も、”真鯛”です。
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 恐らく、この日だけで”真鯛”だけで、100枚近く入荷があったはずです。
 何故、これほどまで”真鯛”の入荷があるのでしょうか?
 ”真鯛”が異常発生したからでしょうか?
 違います。
 養殖の生簀から、逃げたからでしょうか?
 これも、違います。
 この時季、産卵のため、”真鯛”は浅場にやって来ていて、その大群が網にかかったから、これほど沢山の入荷があったのです。ちなみに、このことを、”乗っ込み(のっこみ)”と言います。
 大きさも大小様々です。これほど、沢山の入荷がありますから、値段も普段の”真鯛”の相場からは、考えられない程の値段で、まさに”真鯛”の特売状態です。
 仕入れる方は願ったり、叶ったりです。
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 そんな値段ですから、自分も一枚仕入れてきました。
 携帯電話と比べていただければ、お分かりかと思いますが、かなりの大きさです。4,3キロのものです。
 刺身にする大きさとしては、1,5キロ~2キロくらいまでが、理想的なのですが、今回はあえて、この大きさのものを仕入れました。
 そんな理想的な大きさを表すのが、”目の下一尺”や、目の下八寸”という言葉です。
 ”真鯛”は魚の王様と呼ばれるだけあって、刺身で良し、焼いて良し、煮て良しのオールラウンドプレーヤーです。
 ただ、”真鯛”の仕入れに関しては、注意しなくてはならないことが、一つあります。
 それは、養殖生簀の周りの”真鯛”のことです。”養殖周り”と呼ばれているもので、姿は天然ものと似ているのですが、食べているものが、養殖用の餌なので、味が養殖ものと変わらないのです。こればかりは、卸してみないと分からないので、何とも言えません。
 普段、”真鯛”は値段も高くなりがちなので、仕入れる機会も少ないのですが、先程お話ししたように、入荷する機会も増えそうです。この時季の美味しさを、是非味わってみて下さい。
  志村
 
 

しめ鯖

 今朝、仕入先である沼津魚市場から、帰ろうとしていると、こんな光景に出くわしました。
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 ちょうど、鯖(さば)が水揚げされていました。次々に箱に入れて、量りにかけられていき、並べられていきます。もちろん、水揚されたばかりの鯖なので、鮮度は抜群です。
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 そうこうしているうちに、セリが始まりました。
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 一気に値段が付けられていきます。
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 今朝はラッキーなことに、このうちの一本だけ、分けてもらうことができました。
 これがその鯖です。
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 早速卸して、しめ鯖にしました。
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 鯖は魚の中でも、最も身割れしやすい魚の一つなので、卸す時は注意が必要です。先日お話しした”鰆(さわら)”も同様です。
 かつて鮨屋に勤めていた頃、身割れさせたことがあり、ひどく怒られたことがあり、鯖を卸す時、そのことを思い出さずにはいられません。
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 卸した鯖は、”強塩(ごうじお)”といって、見えなくなるくらいの塩をします。このまま、二時間ほどおきます。
 その時間は、鯖の脂の乗り具合によって、変わってきます。それでも、脂のない鯖でも、一時間半は塩をします。
 時間が経ったら、塩を落とすため、水洗いします。その時も身割れさせないように、注意が必要です。
 そうしたら、二番酢(一度使った酢)で洗い、腹骨を取ります。
 
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 その後、二十分ほど、酢に漬けます。これも塩と同様、時間も多少異なります。
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 こんな感じに仕上がりました。しめ鯖が好きな方には、この赤い色が、何よりも喜ばれます。
 そういう自分も、しめ鯖が大好きなので、この赤い色はたまりません。鮨屋での修業時代、自分で練習して、食べたいがために、築地の市場で、一本、4,000円もする鯖を買ったものでした。
 練習をする時は、高いものを買わなければ、上達しないと自分は思っています。というのも、人間は卑しいもので、自分のお金で買ったものとなると、殊更大事に扱います。
 たかが、練習といっても、真剣になるのは当然です。その真剣さこそが、上達への第一歩なのです。
 仕事を覚えるには、数をこなすことも必要ですが、それ以上に、丁寧な仕事を覚えるためには、質も大事なのです。
 ですから、自分は修業していた鮨屋で使っている魚よりも、ずっと高い魚を使って練習したものでした。そういう時は、心の中で、「俺の魚は、今日ここにある魚よりも、ずっといい魚だ。」と独りほくそ笑んでいました。
 仕事が終わってから、その魚を卸して、鮨を握る練習して、自分で食べたのですが、沢山ある時は、その鮨を持って、夜の新宿・歌舞伎町に繰り出し、飲み屋のお気に入りの女の子に、ご馳走したものでした。
 そんなことばかりやっていたので、独身時代の財布はいつも、スッカラカンでした。若気の至りとはいえ、思い出すと、自分のことながら、あきれてしまいます。
  志村
 

小肌(コハダ)の仕込み

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 小肌(こはだ)は、鮨屋さん専用の魚で、”佳肴 季凛”のような日本料理店では、あまり使いません。
 今現在、和食の世界に身を置いている自分ですが、料理の道に入ったのは、鮨屋が最初なので、小肌をはじめとする”酢〆”にする魚も、使う機会も自ずと多くなります。
 今朝も、なかなかの小肌が入荷していたので、仕入れて来ました。佐賀県・有明産です。
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 小肌の良し悪しや大きさを確認するため、どんなに寒い冬の日でも、必ず自分で小肌を、選り(より)ます。
 そんな冬の日は決まって、「親方、こっちでやりますから、・・・。」と言われる自分ですが、そんなことを、熱血料理人こと、不肖・志村が頼むわけありません。
 それどころか、「自分でやるから、気にしないで。」と相手にしませんし、もっと言うと、他人の触った魚なんて仕込む気になれないのが本当のところです。
 さて、その仕込み方です。まず鱗を包丁を使って取ります。
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 それから、頭と腹を切り落としてから、水洗いします。その後、この様に小肌を開いていきます。
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 文字通り小さい魚なので、丁寧に手早く開いていきます。
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 開き終えた小肌です。
 今度はこれらに、塩をあてます。先ず、盆ざるに塩を振り、そこに小肌を並べていきます。
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 並び終えたら、今度は身に塩を振ります。
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 これですと、どの程度塩を振ったのか、お分かりにならないので、もう少し近くでご覧下さい。
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 塩の分量は、魚の大きさ、脂の乗り具合、季節によって異なります。この小肌の大きさは、1匹が40~50グラム位です。
 今の時期ですと、大体20分位、塩を振った状態で置いておきます。その後、水洗いをして、一度使った酢(二番酢と言います。)で洗います。こうすることで、小肌の水っぽさが抜け、酢が馴染みやすくなります。
 その後、酢に漬けます。
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 今日の場合、6,7分位です。ちなみに、酢に漬ける時間は塩の三分の一が目安です。これも、魚の状態、季節によって多少変わってきます。
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 酢から上げたら、身の部分だけ昆布の上においておきます。こうすることで、余分な水分を昆布が吸い、昆布が小肌の味を引き立ててくれます。
 小肌のように、手のかかる仕事というものは、今の時代、敬遠されがちですが、こういう仕事こそ、料理人として、腕の振るい甲斐があるものです。
 こういう仕事が決して廃れることのないよう、後世に伝えるのも、料理人の使命と思って、包丁を握り続けたいものです。
  志村
 

初鰹入荷

 昨日、鮪の”ヌキ”と”モチ”についてお話ししましたが、今朝たまたまま”ヌキ”の鮪が入荷していました。先ずは、その写真を。
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 ご覧のように、エラとハラワタが抜かれています。ご参考までに。
 ところで、今朝沼津の魚市場に着くと、こんな光景が目に入ってきました。
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 足元の魚から、見当はついたのですが、近くまで行ってみました。
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 中には”鰹(かつお)”が入っていました。ここ最近、たまに入荷があります。
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 量りにかけられて、次々に並べられていきます。
 見た感じは良さそうなのですが、触ってみなければ、その良し悪しは分かりません。
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 エラを開けてみると、鮮やかな赤い色をしています。次にするのは、尻尾の部分を触れてみます。
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 鮮度が良い”鰹”は、この辺りをふれると、ザラザラします。どちらも、合格です。ということで、仕入れることにしました。もちろん、先月入荷していた”鰹”よりも、良いものでした。
 店に戻って来て、早速卸しました。”鰹”は卸してみないと、身の赤い色の出方が分からない魚なので、仕入れる時は、いつもドキドキします。
 先ずは、鱗のついている堅い皮を剥ぎ取ります。
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 堅い皮がついているから、”鰹”というわけではありませんが、加熱したり、また鰹節のように干したりして、堅くなるので、魚へんに堅いと書いて、鰹というのが、名前の由来とも言われています。
 また、”鰹”に限らず、どんな魚も卸してみなければ、実際の身の状態は分かりません。特に、”鰹”は打ち身で、血が回っていることもあります。
 今朝の”鰹”も少しでしたが、打ち身が入っていました。
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 こういう部分は、血生臭いので、包丁でこそげ取ります。
 その後は、切り付けて、盛り付けます。
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 背の部分は、皮を引き、また腹の部分は、美しい銀色を生かすため、皮付きししました。
 こうすることで、違った食感を味わえ、より”鰹”の美味しさを堪能できます。ただ、この時季の”鰹”は、脂は乗っていません。でも、本当の”鰹”の味は、この時季でしか味わえません。
 独特の風味が、”鰹”の美味しさですし、脂の乗った秋の”戻り鰹”は、それで美味しいのですが、脂が乗っている=美味しい、という考え方は、食材本来の美味しさとは、違うはずです。
 鮪のトロはトロで美味しいのは、当然ですが、赤身が美味しいからトロが美味しいのです。ですから、昨今の”トロ志向”というより、”トロ信仰”は、食材本来の美味しさから、離れているような気がしてなりません。
 熱くなりかかったついでにもう一つ。
 ”佳肴 季凛”の地元・富士市や富士宮市の多くの人たちには、”鰹”は人気がありません。何故だと思いますか?
 同じ静岡県でも、中部より西の地域では好んで食べられますし、浜松では”モチ鰹”と呼ばれ、たいへん人気があります。
 魚の流通が、今ほど良くなかった時代、沼津でも沢山の鰹が揚がっていました。その時、それほど良くない”鰹”を魚屋さんが、値段が安いことをいいことに、仕入れて、店で売っていました。
 それを食べたお客さんは、美味しいと感じないのは、当然です。ですから、”鰹”=生臭い=まずい、という図式が生まれてしまったのです。
 そのことについて、とやかく言うつもりはありません。自分は、魚に限らず、食材の持つ本当の美味しさを伝えるのが、料理人のあるべき姿であると、思っているので、それを実践しているだけです。
 そうしなければ、自分たちの業界、つまり日本料理そのものが廃れてしまいますし、さらには日本文化までもが失われてしまうのは、自明のことです。
 そうならないためにも、自分は食の大切さを伝え、日本料理の良さを伝え続けるために、”佳肴 季凛”をやり続けるのです。
 ”鰹”のお話しが逸れてしまいまい、肝心の”鰹”を忘れかけてました。
 これからの時季、”鰹”を時々仕入れます。今が旬というより、走りの”鰹”=”初鰹”を是非味わってください。
  志村
 
 

鰆の卸し方

昨日に引き続いて、”鰆(さわら)”のお話しです。
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魚市場の写真では、発砲スチロールに入っていました。これが、昨日仕入れた”鰆”です。
見ていると、神棚に奉りたくなる程、素晴らしい”鰆”です。とは言っても、そんなわけにはいかないので、卸さなくてはなりません。
”鰆”は魚の中でも、一二を争うほど見割れしやすい魚なので、卸す時はいつも、細心の注意を払っています。
そのため、卸す時は”鰆”を動かさないようにします。「じゃぁ、どうやって、卸すの?」と思われるかもしれません。
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片身を卸したところです。そうしたら、残りの片身を卸すためにまな板ごと動かすのです。
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間違っても、”鰆”をひっくり返したりしません。日本料理店の中には、見習いの若い子には、”鰆”だけは触らせないところもあると聞いたこともあります。
話はそれますが、鮨屋さんでは、”鯖(さば)”も”鰆”と同じ様の扱いをしているところもありますし、自分がかつて勤めていた鮨屋でもそうでした。
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卸し終えた”鰆”です。見割れしないで、卸すことが出来ました。この”鰆”にふさわしい手際です。ちょっと言い過ぎ!?
偉そうなことを言っていますが、時には身割れさせてしまうこともあります。”弘法も筆の誤り”なんて、生意気なことは言えません。
まだまだ、料理人としては未熟の身。特に、包丁捌きは一朝一夕に上達するものではありません。そのため、毎日包丁を握るようにして、いっぱしの料理人に早くなりたいものです。
志村

拾い買い

 予定通りの仕入れが終わって、沼津魚市場を出ようとセリ場を歩いていると、こんな魚が目に入ってきました。
 ”鰆(さわら)”です。”鰆”については、以前お話ししたことがあります。 下の写真手前の魚が、”鰆”です。
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 セリが終わったにもかかわらず、買い手がついていません。市場では、買い手がつくと、こんな風に、番号と問屋の名前のついた札が付けられます。
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 右手前に写っているのが、”鰆”です。ご覧のように、”鰆”には札がついていません。
 ”鰆”が”ふぐ”と同じ位好きな自分は、見向きしないわけがありません。
 早速、市場のセリ人(セリ担当の職員)に声を掛けました。
 「ねぇ、あの鰆残ってんでしょ?いくら?」
 「あぁ、そうだよ。でも高いよ。キロ、○○(円)。」
 具体的な値段も記してもいいのですが、ここではあえてお話ししません。”佳肴 季凛”にいらしたら、お話しはできますが・・・。
 「もう少し、安くしなよ。残したって、しょうがないじゃん。鮮度がいいうちに、売っちゃいなよ。安くしておけば、良いことあるからさ。」
 「・・・。」
 「じゃぁ、帰るよ。」
 「待ちなよ。△△(円)にすっからよ。」
 
 「はいよ。一本もらってくよ。」
 交渉成立です。今日のやり取りのように、売れ残ったものを買うことや、安いものを探して買うことを、料理人の世界では、”拾い買い”と呼んでいます。
 自分が欲しいとなれば、いくらでも出して仕入れます。特に、ここ最近のアオリイカはそんな感じで、その値段に自分でも嫌になります。
 今朝のように、あえて仕入れなくてもいいものは、値段次第で仕入れたりします。そうすれば、お客さんにもリーズナブルな値段で提供できます。
 魚に限らず、美味しいものを出来る限り、リーズナブルな値段で、召し上がってもらうのが、料理人のあるべき姿だと、自分は思っています。
 だからこそ、早起きして市場へ行くのです。それこそが、熱血料理人こと、不肖・志村の生命線ですというより、それを楽しんでいるのが、本当のところです。
  志村
 
 

ころがし

 沼津の魚市場は、漁港も隣接しているので、その場で水揚された魚もセリ場に並びます。
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 左側が、”スルメイカ”で、右側が”ウマヅラハギ”です。
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 これは、”ホウボウ”です。三月の”旬の素材”でもあります。この箱には、15本くらい入っています。
 これらのように、数や目方がまとまると、それだけでセリにかけられますが、同じ種類の魚がそれなりに獲れるわけではありません。
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 右側が、”ごまさば”です。左側が、”タイ”と”?”。”?”は”エボダイ”のような・・・。分かりません。
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 その先には、”カワハギ”、”カマス”、”?”。これまた分かりません。
 これらのように、数や目方が揃わない魚のことを、沼津の魚市場では”ころがし”と呼んでいます。
 ”ころがし”は、それこそ小物ばかりなので、買い手もほとんどつかないので、値段も二足三文どころか、子供のお小遣いにも劣ります。
 鮮度は良いのですが、使い勝手はてんでダメで、それこそ、賄い用のためのようなものです。自分も何度か仕入れましたが、今お話しした通りでした。
 魚市場には、普段使っているような言葉が、特殊な意味というか、市場の中でしか通用しない意味で使われることもしばしばです。
 最近では、そんな言葉も聞き慣れましたが、その語源や本当の意味はどこにあるのか、と思うこともよくあります。
 そう思うと、魚市場はある意味”ミステリーワールド”なのかもしれません。そんな場所に、心惹かれる自分は、一体・・・?
  志村
 
 

からとり

 この時季になると、殻つきの鳥貝が入荷してきます。この殻つきの鳥貝のことを、市場では”からとり”と呼んでいます。
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 主な産地は愛知県で、こんな風に海水の中に入ったままで、入荷してきます。
 ですから、仕入れる時は、その大きさ等に注意するだけでなく、水が貝殻に入ったまま、量りにかけないように、逆さにして、水をこぼします。中に入ったままですと、目方が増えてしまうから、こうするのです。
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 殻つきですから、殻から身を外さなければ、なりません。
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 今度は身を開くのですが、まな板の上で直にのせてしまうと、鳥貝の命と言うべき、黒い色が剥げ落ちています。これを、”はげとり”と呼んでいます。
 ”はげとり”は、自分が勝手に呼んでいるだけです。(笑)
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 そのため、アルミホイルやラップの上で開くのです。
 その次に、中の”わた”の部分を、塩と酢の入った水の中で洗ってから、塩と酢の入った熱湯で、軽く湯がきます。
 時間は大きさにもよりますが、ほんの数秒程度です。
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 こちらが、鳥貝の刺身になります。
 ところで、鳥貝はこんな風に、開いたもの売られています。
 
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 同じように愛知県産ですが、加工地は千葉県と書かれています。また、鳥貝は輸入物もあります。それがこちらです。
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 韓国産です。
 両方とも、生のものですが、開いてあるものはどうしても、風味に欠けます。ですから、美味しくありません。
 さらに、鳥貝というと、固いというイメージを持っている方が多く、固いだけでなく、味も素っ気もないものと、思われています。
 ここには、写真がありませんが、開いたものを冷凍したものが、固い鳥貝の正体で、”ゴムトリ”とか、”ガムトリ”と呼んでいます。これまた、自分が勝手に呼んでいるだけです。
 文字通り、ゴムやガムのように固いという意味です。
 鳥貝に限らず、どんなものでも、最初に食べた時の印象で、その本当の美味しさを知らないでいてしまうことが、多いものです。
 ”佳肴 季凛”では、素材の持つ本来の味を堪能できる食材を、自ら選んで仕入れていますので、鳥貝に限らず、本物の美味しさを味わって下さい。
 ちなみに、”からとり”は入荷もまちまちなので、ない時はご勘弁を。
  志村

鳴き声の源

 ”佳肴 季凛”の3月の旬の素材は、”ほうぼう”です。
 ”ほうぼう”は、あまり大きくならない魚ですが、刺身にするには、0,5キロ以上のものが、理想的です。言うまでもありませんが、美味しいからです。
 ですから、自分が仕入れる”ほうぼう”は、それ以上のものです。
 
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 この”ほうぼう”は、2本で1,4キロですから、1本0,7キロのもです。
 小さいものですと、こんな感じの大きさです。
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 1本が0,2キロなります。こんなに小さいと刺身にとれるのは、ほんの少しで、一人前が精一杯といった感じです。
 
 ところで、”ほうぼう”は、自身の浮き袋をつかって、”ボウボウ”と、鳴くのです。これが転訛して、”ほうぼう”と言う説もあります。
 ”ほうぼう”を水槽から出したところです。
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 これが、締めたばかりの”ほうぼう”の姿です。
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 卸すと、お腹の中にこんな感じの浮き袋が入っています。
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 最初の写真のように、市場の生簀にいる時は、なかなかその鳴き声を聞くことができませんが、水槽にいれておくと、はっきりとその鳴き声を聞くことが出来ます。
 ちなみに、こちらが”ほうぼう”の身です。
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 2種類並んでいますが、上が”ほうぼう”で、下が”ひらめ”です。一般の方で、これを見ただけで、その魚が分かったら、かなりの白身通です。
 一口に白身といっても、色々ありますが、自分が一番好きなのは、この”ほうぼう”です。
 だから、こんなふうに、お話ししたくなるし、写真に収めたくなるのです。
 今が旬の”ほうぼう”を、是非召し上がってみて下さい。ただ、自分の気に入ったものが無い時は、仕入れてこないので、お許しを。
  志村
 

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