ふぐカツ
魚市場を歩いていると、時々珍しいものを見つけることも、しばしばで、先日の、”サメ”のような変り種もあれば、冷凍食品や加工食品にも、「何、これ?」というようなものも、あります。
それがこちらです。”ふぐかつ”なる商品で、自称”富士市で一番ふぐが好きな男”の自分としては、手に取らずにはいられませんでした。ただ、見るだけでは全く意味がありません。
そのふぐが、どんなふぐを使っているのかが、何よりの疑問点です。そういう時はパッケージの裏側の、表示を見ます。
ふぐの加工食品は、使っているふぐがどんな種類のふぐで、どこで獲れたかを、記さなくてはなりません。
ご覧のように、”中国産のしろさばふぐ”です。しろさばふぐは、以前お話ししたことがあります。詳しくは、こちらを。
どんなものでも、一度は食べないと気が済まない性分ですが、今回は手に取っただけでした。理由はあえて言いませんし、味も想像できますし・・・。
ただ、こういう食品も世の中にはあるということだけは、知っておかなければならないと、思っています。料理人である以上、”あれは知らない、これは聞いたことがない。”ということだけは言いたくありません。
それが、本物であり、辿り着けるかどうかわかりませんが、そこを目指し続ける日々です。
志村
先生デビュー
以前から、お話ししていたように、昨日は東京電力の富士支社で、先生デビューを果たしました。
緊張のあまり、前の夜は寝れないなんてことはなく、しっかりと4時起きして、沼津魚市場に仕入れにも行ってきました。料理講習会そっちのけではありません。というのも、明日は市場が休みだからです。
昨日に限って、セリの終わる時間が遅れ、富士市までの道中、気が気でありませんでしたが、”佳肴 季凛”に着いて、講習会の準備をし、遅れることもなく、会場入りし、準備も無事済ませることが出来ました。
準備が終えた頃、開始時間前にも関わらず、参加者の方が見え始めました。
IHクッキングヒーターを使うこともあり、参加者の方の中には、マクスの社長に、IHに関する質問をしている方もいました。
そんなことを尻目に、自分は”デビュー”を待つばかりです。参加者の殆どの方が座り始めました。
そうこうしているうちに、講習会は始まりました。最初は緊張していたのですが、教壇ならぬ調理台の前に立てば、”水を得た魚”とまではいかなくても、緊張もほぐれました。
ここからの様子は、マクスの社長のブログとの二元中継で、お楽しみ下さい。
講習会の途中で感じたことは、参加者の皆さんの食への関心が予想以上に高いことでした。
これを機会に食への関心、さらにはマクロビオティックにも関心を持っていただけそうなことも、嬉しい限りでした。そして、”人は教えることによって、もっともよく学ぶ”ということを、改めて感じることが出来た一日でした。
参加者の皆さん、マクスの方々のご協力あってこその講習会でした。どうも有難うございました。また次回も開催できるように、料理の道に精進します。
志村
バスツアーのお客様のランチ
”佳肴 季凛”の駐車場のスペースは、広いので、このようにバス(この写真は中型 28人乗り)も駐車可能です。もちろん、大型バスもです。
バスで見えるお客様なので、地元富士市でなく、遠方のお客様です。今回は御前崎の方たちでした。ちなみに、御前崎は”佳肴 季凛”とつながりがあります。
何も自分の出身地というわけではなく、”ふぐ”、”さわら”をはじめとした色々な魚の多くは、御前崎産です。今回お出しした刺身の”すずき”も御前崎産でした。御前崎の魚は、良質の魚が多いのが、特徴です。
”さわら”については、以前にも、お話ししたことがあります。昨日お話しした”ふぐ”も御前崎産です。
団体のお客様のお食事ですから、普段のランチ以上に忙しく、特にホールの女性スタッフは、なおさらです。
お客様との会話も地元・富士市の方とは、違う内容なので、ある意味新鮮味があります。遠方のお客様なので、富士山が見えると、料理以上に、喜ぶこともしばしばです。
また、お帰りも皆さん一緒です。従業員みんなで、お見送りです。
お客様も、バスの中から手を振ってくれます。こんな風に、団体旅行のお客様が、見えると、自分たちもちょっとした旅行気分に浸れます。決まってその後の会話は、「こうやって、バス旅行に行ってみたいよね~。」です。
「ね、親方。伊豆の近場でも、どうですか?」
「もっと、儲かったら、みんなで行こう!さぁ、その前に仕事、仕事。」
志村
一年を通じて、富士市で天然ふぐが安く食べられる訳
まだまだ、寒い日が続きますが、ふぐのシーズンも段々と終わりに近づいてきました。
ふぐの入荷量も、秋口に比べ、少なくなってきました。そうは言っても、時には、入荷量が多い時もあります。昨日もそうでした。
沼津魚市場の活魚のセリ場です。
この他にも、ふぐが入っていました。
こういう時は、値段も安いので、自分は何本もまとめて、セリ落としてもらいます。
そのままふぐを活かしたまま、”佳肴 季凛”のある富士市まで持って帰ってきます。そのまま卸すこともありますが、忙しくて卸せない時は、例の水槽ならぬ”富士市私設ふぐ水族館”に入れておきます。
手が空いている時を見計らって、水槽から出します。
そして卸します。
今更ですが、これまでの作業(仕入れから、仕込みまで)全て、自分一人です。
また、先程お話ししたように、余程のことがない限り高い値段で買うことはあまりしません。
この卸したふぐを、しばらく寝かして使うこともあるのですが、今回のように多く仕入れた時は、真空包装して、冷凍するのです。
これを、マイナス40度で急速冷凍するのです。
冷凍しても、天然ふぐは、味が殆ど変わらないのです。百回中百回とまで言わなくても、十回中十回、違いが分かったら、その人はかなりのツワモノと言えます。
実際ふぐ専門店(通称ふぐ屋)では、このようにやっています。ただこういうことがなせるのも、天然ものだからこそで、養殖ものではそうはいきませんし、実際そういうものもあるのですが、味は・・・。
活きていたとしても、養殖ものは、逆立ちしても冷凍の天然ものにはかないません。繰り返しになりますが、天然の”冷凍”と”生”は遜色ありません。
”佳肴 季凛”では、予約が集中した時や、夏場のふぐが無い時はこのように、冷凍したものを使います。だからこそ、値段もそこそこに抑えることができるのです。
参考までに、当店のふぐの値段は、こちらを。
ふぐが無い夏場でも、また、ふぐの本場でもない富士市でも、安く天然ふぐが食べられるのも、今日お話しした理由によるのです。また、夏場にも活きた天然ものの入荷もあるのですが、冬場のものに比べ、正直言って、味も落ちるので、値段も安くしてあるのです。
もうすぐ、ふぐの旬は終わってしまいますが、”佳肴 季凛”では一年を通じてふぐが召し上がることができるので、「時季を逃した。」なんて言わず、いつでも召し上がって下さい。
そのために、ストックしてありますが、無い時はご勘弁を。
志村
割帳
昨日お話ししましたが、我々料理人は、レシピを多用しません。レシピと記しましたが、日本料理では、”割”と言います。とは言っても、その店ごとの味があり、”割”どおりに作るものも、あります。
当然、分量は決まっています。もちろん、”佳肴 季凛”にもあります。全て、自分オリジナルです。
頻繁に作るものでしたら、覚えているのですが、中にはそうでないのも沢山あります。ですから、忘れないために、なんらかの形で書き留めなくてはなりません。自分はノートに記しています。このノートのことを、”割帳”と日本料理の世界では、呼んでいます。
このノートが、”佳肴 季凛”の味付けのエッセンスです。
この”割帳”だけでなく、自分は今でも修業時代の”割帳”を持っていて、時々開いて、使うこともあります。
こういう積み重ねがあってこそ、今の自分、そしてこれからの時分です。
中はこんな感じです。
と記すと、「秘密じゃなの?」と、思われるかもしれませんが、自分は全く気にしません。
というのも、仮に真似されても、未来永劫それは、”佳肴 季凛”の味であって、他所の味ではないからです。
ですから、自分は店でも、お客さんに作り方を聞かれれば、どんな材料を使っているのか、躊躇うことなく、答えます。
また、”佳肴 季凛”の割帳だけでなく、修業時代の”割帳”も今でも、大切に持っていて、時々開くこともあります。
かれこれ、10年以上も前の”割帳”です。
”割”通りに、料理が作れるのなら、料理人の存在意義はありませんし、それぞれの店のオリジナルも必要ありません。
そして、その場その場の状況に応じて、料理を作ってこそ、料理人の真価が問われるのだと思います。
そのためにこそ、自分は進むだけです。
志村
下見
今日は、ランチの営業を早めに切り上げて、富士市吉原にある東京電力へ行って来ました。電気代が未納で出頭してきた訳ではありません。
以前お話ししましたが、1月26日(月)に、マクスさん主催の、IH料理教室
の会場の下見に行って来ました。
お陰様で、参加人数も予想以上で、今から緊張しています。面識のない方と、お話しするのは、商売柄慣れてはいるのですが、人前に立ってお話しをするのは、別物です。
この部屋が会場で、マクスの社長と奥さんが東電の方と打ち合わせしているところです。
こちらのIHクッキングヒーター付の調理台で、参加者の方が、料理を作ります。
一方こちらが、”先生”である自分が立つ調理台です。
”先生”・・・・・。この響き、照れくさいような、格好いいような。講師と呼ばれた方が、平常心でいられるのですが・・・。
”先生”。う~ん、「余は満足じゃ。」もうそれだけで、十分です。
しかしながら、そうは問屋が卸さないのが現実です。というのも、講義内容をここにきて、変更することになったからです。
近いうち、ブログでお話しするつもりなのですが、我々料理人は、いわゆるレシピを、多用しません。勿論先日お話ししたような、デザートや、たれのようなものには、レシピがあり、それを基に作ります。
ただ、味噌汁のようなものは、その時に応じて作るので、”何が何cc”とか、”何g”みたいなことは、全く見当がつかないのです。それこそ、大体ってやつです。
今回の献立には、”和風ミネストローネ”という汁物が入っているので、その分量を、「こんな感じです。」みたいに済ませるわけに、いかなくなったのです。
帰りの道すがら、マクスの社長に、「普通の人に、わかりやすく説明するのが、”先生”の役目ですから、お願いしますよ。ねぇ、”先生”。」と念も押されました。
それをやるのが、”先生”というより、料理人の使命と思い、慣れない計量カップとスプーンと、にらめっこするので、今日はこの辺で・・・。
志村
観賞用
寒い朝でも、沼津の魚市場へ行くのが、自分の日課なのですが、行く時はいつも、どんな魚が入荷しているのか、楽しみ半分と不安半分です。
楽しみは今更お話しするまでもありませんが、不安というのは、特にこの時季はシケで、魚の入荷が少なく、高値になったり、献立の変更を余儀なくされることです。
今朝はそんなことはなかったのですが、入荷状況はやや少なめでした。
市場に着いて、先ず足を向けるのが、活魚のセリ場です。この時季ですと、平目、ふぐを主に仕入れてきます。勿論、他の変わった魚を仕入れることもあります。
生簀を見ながら歩いていると、変り種がいました。
ちょっと見づらいので、生簀から上げてみました。
”エイ”のように見えますが、違います。自分も最初はそう思ったのですが、札がつけられていました。
”サメ”です。1本で、3,4キロのサメです。
食べれるかどうかは、全くわからないのですが、と言うよりも、美味しそうには思えません。セリ落とす仲買人の目的は、専ら観賞用で、店内に水槽のある日本料理店や居酒屋に納品するのです。自分もたまに見かけたこともあります。
また、値段もあってないようなものです。ただ、時々複数の仲買人が、セリあうこともあるので、普通に食べられる魚よりも、高い時があり、そんな時はセリ場が妙に和んだりもします。
今朝、声を掛けたのは一人でした。”佳肴 季凛”にも水槽ならぬ”私設富士市ふぐ水族館”があるので、仕入れてもいいのですが、店の裏にあるので、観賞用にもなりませんし、かえって他の魚の居場所がなくなるので、仕入れないのです。
仕入れたいのが、本音なのですが・・・。
志村
『佳肴 季凛』の串焼は、生の本鮪
ご存知のように、”佳肴 季凛”は、会席料理をメインとしてる日本料理店ですが、だからといって、単品ものがないわけではありません。ただ、居酒屋のように、串焼や鳥の唐揚げのようなものはありません。
とは言っても、一つだけ串焼があるのです。
”鮪の串焼”です。佳肴 季凛”で使うまぐろは、今更ですが生の本まぐろで、今回は”大間のまぐろ”です。
焼いてお出しする以上、赤身の部分では美味しくありません。だからと言って、中トロの部分では、とんでもない値段になってしまいます。
この部分が串焼に使う部分です。”佳肴 季凛”で仕入れるまぐろは、背の部分で、この部分は背びれのすぐ隣りで、筋が強い部分です。ただ、脂の乗りは、中トロと遜色ありません。
この部分を塊から、取り分けます。この部分は、先日お話ししたように、ランチメニューの一品としてお出ししたりもします。
この白い部分が筋です。刺身で食べるには、ちょっと不都合です。これを、串焼用の大きさに包丁します。
これを、串に刺します。
そして、粗塩とブラックペッパーを振り、ただ焼くだけです。それこそ、それだけです。
それだけで、美味しいのです。と言うより、それ”だから”美味しいのです。やはり、「素材に勝る味付けなし」です。
言うまでもありませんが、まぐろは刺身で食べてこその食材です。ただ、部分によっては焼くことで、旨味が凝縮され、甘味を感じることが出来ます。
「こんなのあり?」という意外な料理も、”佳肴 季凛”らしさと、自分では思っています。たまには、日本料理店ならではの串焼も如何ですか?
志村
ペティナイフ
志村さんが、今日使った包丁を研ぎ終えたところです。最低でも一日に4,5本は使っています。
実を言うと、この包丁の中には志村さんが使っていない包丁があります。ということは・・・。そうです。私が使っているのです。借りているというのが、本当のところです。
これがその包丁で、ペティナイフと呼ばれる包丁です。先程の写真の中でも、これだけが小さいのがお分かりいただけると思います。長さは18センチ程で、果物ナイフと対して変わらない長さです。
ただ私が切るものといえば、豆腐や三つ葉などの、誰でも出来るようなものばかりですが、それでも去年の暮れには、りんごの皮をむきました。というより、むかされました。その時の様子は、こちらをご覧下さい。
志村さんが手入れをしてくれるので、切れ味は抜群で、手を切らないかといつもハラハラしながら、仕事をしています。でも、志村さんによれば、切れる包丁のほうが、仕事がきれいに、速くできるというのです。言われてみれば、そんな感じです。
また、切れる包丁で指などを切っても、治りが早いとも、志村さんが言ってました。包丁を使う機会が少ないので、手などを切ることは、めったにありませんが、それだけは避けたいものです。
真由美
追伸 かえって志村さんのほうが、切る機会が多いようです。それだけ使う時間が長いからだと思いますが、志村さんは、「まだ、手を切っても痛いと思わないからで、痛いと感じるようになったら、切らなくなる。」と言ってます。そんなものなんですかね~。
ランチでも、大間の鮪を。
”佳肴 季凛”で使っている鮪は、大間をはじめ、生の本鮪です。
こちらは、今日入荷した本鮪です。もちろん、青森県大間産です。
この塊が、全部刺身として、使えるわけではありません。皮も血合いもついています。また、筋っぽい部分もあり、刺身としては使えません。
皮は焼いて出汁を取るのに使っているお話しは、以前したことがあります。
ところで、ちょうど今、鮪の柵とりをしているところです。
塊の上部の赤身の部分を、まず取ります。この部分のことを、”テンパネ”と言います。語源は分かりませんが、恐らく、”天をはねる(取る)”から来ているはずです。
この部分は、赤身の刺身として使えます。これを、さらに刺身が引きやすい形に整えます。
刺身を引き終えたところです。当然、写真右側の不ぞろいな部分も出ます。この部分を、”佳肴 季凛”ではランチメニューに使っています。今回は”山掛け”にしました。
”半端”な部分とはいっても、大間の鮪です。美味しいのは言うまでもありません。
この”山掛け”を召し上がったお客様は、「こんな鮪が富士市で、しかもランチで食べられるなんて、お得だよね。」とか、「日本料理店ならではのランチだよね。」と褒めてくれます。
夜は夜で、ちゃんとした部分(中トロや赤身)を、一品または、会席料理の刺身としてお出し出来、作る自分としては、両方のお客様に喜んで頂けるので、有難いですし、料理人冥利につきます。
「美味しい。」と言ってもらえることが、自分にとっては何よりの評価であることは、今更お話しするまでもありません。
この”山掛け”が付くのが、昼の小会席の”季(1,500円)”です。ちなみに、”凛(2,800円)”には、ちゃんとした刺身(三種盛り)がつきます。
仕入れ状況や季節によって、ランチの内容は変わりますが、”山掛け”というより、”大間の山掛け”を是非一度、召しあがって見て下さい。
志村