土佐醤油の作り方
日本料理の華と言われるのが、
刺身です。ここに盛り付けてあるのは、本鮪の中とろと赤身(宮城・気仙沼)、小肌(佐賀)、障泥烏賊(静岡・沼津)、しょうさいふぐ(同・由比)、帆立(北海道)です。
刺身は、山葵と醤油だけで食べるシンプルな料理で、素材の味が最大の決め手でもあります。【佳肴 季凛】の山葵は、
卸したての本山葵(静岡・富士宮)を、使っているので、そのまま刺身に乗せて、
醤油をつけて、食べると、本山葵の香りと辛味が、失われることなく、刺身の美味しさを引き立てくれます。本物の素材には、本物しかありません。ちなみに、粉山葵や練り山葵で、このような食べ方をしても、ただ辛さを感じるだけですので、醤油に溶いて食べるのが、無難です。
当店に限らず、日本料理店の多くは、刺身につける醤油は、そのままのものでなく、他の調味料を合わせた“土佐醤油”というものを、お出ししています。生醤油(きじょうゆ)と呼ばれるそのままの醤油では、食べ方のごく一例に過ぎません。
“土佐醤油”も、その一つですし、先日お話ししたポン酢も、然りです。つけ醤油に使う材料を合わせることによって、本来の味が、新しく生まれ変わります。それは、あたかもカクテルのようなもので、つけ醤油の面白さでもあります。
当店の“土佐醤油”の仕込み方ですが、鍋に、
日本酒、赤酒、味醂を、
入れ、そこに、
昆布と干し椎茸の足を入れ、一日置いておきます。その後、
火にかけ、沸いてきたら、鰹節を入れ、火を止めます。この鰹節が、土佐醤油と言われる所以で、鰹の産地で、有名な土佐(現在の高知県)にちなんでいます。
日本料理では、有名な産地を料理名に使うことを、よくします。例えば、山椒を使った料理には、有馬(兵庫県)だったり、ワインを使うと、甲州など、枚挙にいとまがなく、何とか風というよりは、ずっと趣があり、日本料理に携わる身としては、誇らしく思えるのです。
火を止めたら、
有機仕込みの濃口醤油と溜り醤油を合わせたボウルに、
鍋の調味料を、
入れ、そのまま三日ほど、常温でおいておき、
キッチンペーパーで、濾してから、
瓶に入れ、冷蔵庫で、保管します。
ここ数年の労働力不足に加え、安易な修行を求める風潮が、手間をかける仕事の存在を忘れさせているだけでなく、コスト高を招くこともあるので、敬遠されています。
昨年、日本料理文化が、ユネスコの無形文化遺産登録された今こそ、手間暇をかけることが、日本料理に携わる身に課された使命である以上、自分は、愚直に、仕事をこなすのみです。
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