鱧(はも)と新子(しんこ)
夏が旬の魚は少なく、その中の代表選手とも言うべき魚が鱧で、その美味しさは、他の魚にはなく、夏から秋にかけての美食であるのは、広く知られており、この時季、普段通う沼津魚市場で、自分が最も多く仕入れる魚です。
沼津魚市場で、鱧を最も多く扱うのが、
活魚売場ですが、余程のことがない限り、自分が一番最初に向かう売場で、今朝も然りでした。
そんな今朝は、
予め注文しておいた活かしの鱧(山口産)を、
確認し、
売場の状況を見てみると、
大分産の活かしの鱧が並んでおり、その前には、
同じく大分産ではありますが、落ち鱧と呼ばれ、輸送中に死んでしまった鱧がありました。
お分かりかと思いますが、落ち鱧は、活かしの鱧と一緒に送られてきたもので、この中から、
4本入で1,85キロのものを選り、仕入れることにしました。
また、生簀の前には、
佐賀産の小肌と、
その幼魚の新子が、
並んでおり、生物学的つまり標準和名では、どちらもコノシロで、全く同じものです。
ただ、魚を専門に扱う人達の間では、コノシロに限らず、魚は大きさによって、呼び名が変わるだけでなく、市場価値も変わるのが一般的です。
また、名前が変わると、出世魚と思われていますが、コノシロの場合、成長するにつれ、値段が安くなるので、出世魚と呼ぶことは出来ません。
ちなみに、出世魚というのは、歴史上の人物の豊臣秀吉の立身出世にちなんだもので、出自は農民ながらも、最終的には、武士の最高権威まで上り詰めた出世を、地で行ったような生涯だったのは、広く知られていることです。
さらに言うと、豊臣秀吉は、日吉丸、木下藤吉郎、羽柴秀吉、豊臣秀吉と4回名前が変わっているので、厳密に言うと、名前が4回変わらないと、出世魚とは呼ぶことが出来ません。
新子は、梅雨入りした頃から入荷し、
お彼岸を過ぎると、成長してしまい、限られた時季のものです。
また、新子の仕込みは、小さいゆえ、
かなり骨が折れますが、酢締めにする魚ですので、小肌も新子も、仕込みの仕方は、全く同様で、新子の仕込み方については、こちらをお読み下さい。
そして、酢から上げた新子を、昆布で挟み、
冷蔵庫へ。
そして、今夜の鱧料理のコースの刺身で、
お出ししましたが、その内容は、
生の本鮪(塩釜)、
鱧(山口)、
蛸(神奈川・佐島)、
新子(佐賀)でした。
新子や小肌は、日本料理よりも、鮨屋で使う頻度が高い魚で、出始めの時の値段は、目が飛び出るほどの高さで、一時的な相場とは言え、ありとあらゆる海産物の中で、もっとも高いかもしれません。
一番最初に、築地に入荷する時は、その時にもよりますが、100グラム入のものが、3パックというような少なさで、そういう時のキロ単価は、“福沢諭吉”が数枚にもなったりもします。
そのような値段ですので、築地にしか入荷しないので、国内で、300グラムしかないということになり、それこそ、レアものなのです。
ただ、出回り始めると、かなりのお値打ちで仕入れることが出来、最高値と最安値の差は、同様に一番で、何十倍どころか百倍を越える場合もあります。
自分にとって、料理の道の始まりは、鮨屋でしたので、新子が出始めると、妙な胸騒ぎがし、毎年、新子の値段が落ち着くと、
新子丼を作り、賄いで食べ、旬の味を堪能しています。
となると、明日辺りは・・・。(笑)
☆★☆ ラジオエフ 『うまいラジオ』に出演中 ★☆★
毎月第一木曜日 昼2時頃から、ローカルFM局ラジオエフの番組『うまいラジオ』で、旬の魚について、店主兼“熱血料理人”の自分が、熱く語ります。
次回は、9月6日(木)の予定です。
放送エリアは限られますが、お時間のある方は、是非、お聴き下さい。
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