水槽の鱧(はも)の夜警
沼津魚市場で仕入れた鱧は
【佳肴 季凛】の水槽に入れてから
2、3日の間
目を離すことが出来ません
2026年10月16日
Vol.4993

いらっしゃいませ
マクロビオティック
(玄米菜食)を
基本に据えた
“身体に優しい
美味しい日本料理”を信条とし
魚菜食文化でもある
和食文化を
支えてくれる漁師の
代弁者として
静岡県富士市の
日本料理店【佳肴 季凛】の
店主兼熱血料理人の
志村弘信が認(したた)めます

仕入れた日だけでなく
明くる日は
水槽の鱧が落ちることは
珍しくなく
頻繁に
水槽の様子を
確認しなくてはなりません
ちなみに、水産業界では
死んでしまうことを
落ちるとか
上がると呼んでいます

夕べ、水槽を見に行くと
怪しげな動きの鱧がいたので

取り出し
締めることにしました

「折角、活きたまま仕入れたのに
落ちちゃうのは
なんか損した気になるのは
僕だけ?」
と、熱血君
「熱血君だけじゃなく
自分も同じだよ」
と、返しました

活〆にしたら
神経を抜き

ぬめりを取り
腹を裂くと

胃袋から
未消化のえさが
出て来ました
得てして
こういう状態の鱧は
落ちやすいもので
この状態で落ちたままだと
この臭いが回ってしまい
使い物にならなくなってしまうのです

虫の息状態とは言え
まだ活きていたので
身も透き通っていますが
一部に血が滲んでいるのも
弱い鱧の特徴とも言えます

「これなら
全然、問題ないじゃん」
「そうだよ
だから、落ちそうになったら
速攻で締めた方が
いんだよ」
「へぇ~」
懐中電灯を点けてはいても
暗闇で確認するので
百発百中とは限らず
再び、水槽を見ると

落ちた直後の鱧がいたので

卸したところ
いくらか、血が滲み
身がイマイチなのは
一目瞭然で

尾の方は
血痕もありました
そして、明くる日の今日
朝一番に、水槽に行くと
これまた、虫の息状態の
鱧がいたので

取り出しました
活〆にし
水洗を終えると

「おはよう、親方🐡
もう一本いたんだね」
「そうなんだよ
昨日もだけど
持って来て
2、3日のうちは
落ちやすいから
こればかりは
どうにもならないんだよ」
「そうなんだぁ」
「虫の息だったけど

今日のも

昨日のも
活〆だから
身は綺麗でしょ?」
「そうだね

で、このハモは
何に使うの?」
「落とし(湯引き)以外なら
なんでも出来るけど
鱧しんじょう蒸しにするよ」
「あのふんわり感が
いいよねぇ」
鱧料理のコース自体は
9月半ばを目途に
終了しましたが
鱧の手持ちも十分あるので
御用意が可能です
夏が旬のイメージの鱧ですが
実を言うと
これから冬場にかけて
脂が乗ってきます
そもそも、旬というものは
誰彼となく
勝手に名付けたようなものです
特に、沼津魚市場には
伊豆方面や地元の漁師が
水揚げした魚が入荷します
それを見ている自分としては
獲れた時が旬
なのです
いわゆる旬という枠に
囚(とら)われることなく
自分の目を他よりに
“一番旨い瞬間”を
逃(の)がさないために
魚市場へ通い続け
それは
魚菜食文化の日本料理を支えてくれる
多くの漁師達の代弁者として
声を出し続けるための
使命に他なりません
















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